Sleep Forever/Crocodiles | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Surf’s-Up アメリカ・サンディエゴの2人組、クロコダイルズの2nd。1st「Summer Of Hate」は初期ジザメリを想起させるかなり好みの音だったのでよく聴いた。いかにもインディーな音質の悪さ、デモのような作りたて感さえも、彼等のサウンドにはとても似つかわしいようなところがあって、インパクトの強い作品でもあった。


 今作ではプロデューサーにジェイムズ・フォードを迎えている。シミアン・モバイル・ディスコのメンバーであり、ラスト・シャドウ・パペッツやクラクソンズのプロデュースを手がけた事でも有名なジェイムスを立てたということで、今作はじっくり作り込むことを選んだのが分かる。


 実際完成したものは、前作での不健康感たっぷりな雰囲気はやや後退し、代わりに輪郭のはっきりとした骨格の強いギターロックへマイナーチェンジしている。しかし、ノイジーで凶暴感溢れるギターサウンドは、より切れ味を増し、ビートもよりアタック感の強いものとなった。


 そして、前作でも光り輝いていたメロディーセンスはここでも健在。キャッチーさは前作の方が上だろうが、彼らのようなバンドの音が好きな人の嗜好を熟知したような「さじ加減」は今作の方が上だろう。シューゲイザー、ニューウェーヴの恍惚感や陶酔感を十二分に味わえつつ、冗長にならないよう締めるところは締めるというメリハリが付けられている。ボートラを除くと全8曲。やや短めな構成もその辺を狙っているのかもしれない。


 また、初期ジザメリのテイストを残しつつ、音のバラエティー感はより広がっている。例えばHollw Hollow Eyesのギラギラしたえげつない感じやHearts Of Loveに宿っているポジティヴさを含んだ高揚感など、前作の一本調子な感じをここで完全に打破している。彼ら自身のサウンドスタイルが徐々に洗練されてきているというか、未だ雑多な音楽性を吸収している途中なのかもしれない。ただ、ラストのAll My Hate And My Hexes Are For Youではほとんどギターが使われることなく、シンセと無機質なビートでサウンドスケープを描くという「らしからぬ」展開で終わる。自分にはそこはやや物足りなかった。個人的ベストトラックはMirrorsとSleep Forever。特にMirrorsの疾走感と炸裂するメロディアスなサビは、自分が幾つになっても好きな感じだと思う。Sleep Foreverの黄金律グルーヴも然り。


 そして、日本盤ボートラのJet Boy Jet Girl、Groove Is In The Heart / California Girlsが実に秀逸。特にGroove Is~のギターとビートのドラッギー感、サーフ・ポップ風のコーラスワークはすごく新鮮で、出来ればアルバムに収録されて欲しかった。


★★★★(04/12/10)