マニックス1年半という短いスパンでのニューアルバム。前作がリッチーの歌詞を使い、彼が在籍していた頃のアグレッシヴなサウンドのアルバムであった。余分なものを削ぎ落とし、過剰なドラマ性を排除し、ストイックな世界観を作り上げたことは、彼らにとってはかなりの困難を伴った作業であっただろうし、実際「やりきった」感の強いアルバムだと僕には写った。
個人的に彼らのベストはHoly Bibleな僕にとっては、前作は好きなテイストのアルバムであったが、おそらく国民的バンドとして彼らに期待するサウンドとは若干ずれていたんだと思う。しかしながら今作は前作で影を潜めた部分が解放され、全曲シンガロング出来るんじゃないかというくらいマニックス節全開のアルバムとなっている。
オープニングは(It's Not War) Just The End Of Love。乾いたギターのイントロからストリングスが加わり、初っぱなから怒濤のドラマティックなメロディーが炸裂する。ジェームズのヴォーカルもどこまでも気持ちよく伸びやかに聞こえる。続くPostcards From A Young Manは与太者たちのバラッドとも言うべき、強いピュアネスを歌ったナンバー。ここでもストリングスが響き渡り、ビッグメロディーが展開している。3曲目Some Kind Of Nothingnessでは、なんとイアン・マッカロクとデュエット。しかし曲調はサビでゴスペル風コーラスが壮大に広がるビッグナンバー。彼らのドラマ性の強いサウンドにはすごくマッチしている・・・
というわけで、序盤はまさにパブリックイメージに応えるかのような、見事なビッグサウンド満載となっている。身も蓋もない言い方をすると、コテコテ且つベタベタなロックではあるのだけど、いやらしさや商業主義的なところを全く感じさせない、独特の空気感がある。それは、彼ら自身の中にあるポップネスに対して、未だにピュアな姿勢を保ち続けているからだろう。彼らが音楽が好きで、音楽の力を絶対的に信じている。だからこそ、彼らは解散できなかったのだろうし、これからだってやり続けるのだ。
後半はソリッドなロックンロールが復活。メランコリックと疾走感がせめぎ合うI Think I Found It、最もゴリゴリしたA Billion Balconies Facing The Sunといった中でニッキーがヴォーカルを取るThe Future Has Been Here 4 Everが良い味を出している。こういうナンバーがもう少しあると、アルバムの中でもう少しアクセントを付けられたのかなという気もする。
いろいろな意味でボリュームがあるので、通して最後まで聴くのは少々しんどいところがあるかもしれないが、前作同様に「やりきった」感がこのアルバムにもある。このアルバムの曲だけでライブをやっても十分に成立するだろうな。
★★★★(24/10/10)