The Coral、3年ぶり6枚目のニューアルバム。 デビューしてから8年。もっと昔からいたような気がしていたが。ギタリストの脱退、ベストアルバムのリリースを経て、区切りのニューアルバムということになるわけだが、プロデューサーにジョン・レッキーを迎えて制作された。ちなみにジョン自身がThe Coralの大ファンらしい。
確固たる世界観を持ったバンドであるので、この新作も劇的にサウンドが変わると言うことはない。1曲目More Than A Loverからコーラル節全開であるのだが、音像はサイケデリックに靄がかかっているのに、メロディーはソリッドな感触を持っていて、その両者のバランスが絶妙である。コアなコーラルファンにはちょっと明るすぎるんじゃないかと思われるかもしれない。が、一旦リセットしたバンドの気概みたいなものが満ちていて、サウンドが生き生きしているところが僕は好きだ。
そのように、割と陽性なメロディーを持った曲もあれば、22-20'sあたりにも通じるブルージーな曲、シンプルなフォーク、ネオアコテイストな曲などブリティッシュ・ロックの玉手箱みたいな内容となっている。ただ、アクの強さはやや弱まった印象。1曲1曲が非常にタイトな感じで、アルバムがテンポ良く進んでいく。このサクサク感も今までには無かったように思う。この辺はプロデューサー、ジョン・レッキーの仕事だろう。ジョン・レッキーはヴィンテージ感のあるサウンドを、時代に関係なくリスナーの心に届けることのできるプロデューサーだと僕は思っている。
アナログテイストなサウンドを作り出すのに、レコーディング当初は8チャンネルのレコーダーしかないスタジオを使っていたらしい。そのアナログ感がコーラルの世界観の屋台骨であることは間違いないが、今作ではややもするとポップすぎてしまうような楽曲群に命(ロック・マインド)を吹き込むような効果をもたらしているように思う。
個人的なベストトラックは文句なしにButterfly House。総じて言うと、キャリア史上、最も聴きやすいアルバムかもしれない。でも決して口当たりが良いというわけではない。聴いて確かめてもらえれば幸いです。
おすすめ度★★★★☆(23/09/10)