ネイサン・ウィリアムス率いるWAVVESの通算3作目。ステージ上で喧嘩したドラマーがそのまま脱退するという、バンド存続の危機を迎えたそうだが、故ジェイ・リータードのバンドをクビになった2人が新加入し見事に復活を遂げた。クビになった2人ということで演奏力は大きな飛躍を望めなさそうだが、バンドとしての形を作れたことが影響しているようで、この新作は前作よりはバンドサウンドへの移行を見せている。
オープニング、King Of The Beachはチープでヘロヘロな演奏ながらも、メロディーがポップにまとまっていて非常に聴きやすく、いきなりのビッグ・ライドを見せる。前作は暴発しまくり制御不能のノイズ・グルーヴと、ギリギリ形をとどめたメロディーで非常にインパクトのある音楽を作り出していたが、今作はずいぶんと聞きやすくなった印象。特にメロディーの質が向上したことと、アルバムタイトルの通りサーフィン・アルバムというフォーマットを設定したことによって生まれたトータル感が関係していると思う。
Post Acidのようにウィーザーに引けを取らないくらいパワー・ポップに近い爽快なナンバーがあったり、もはやギターノイズの欠片さえ取り払われたConvertible Baloonのような曲があったりとサウンド面では幅が広がっている。ジャンクなテイストは残っているものの、曲の形が歌ものとしてはっきりしていて、尺も2、3分のものが多くテンポよく進んでいく。なので、ひたすらビッグ・ウェーヴに乗り続けるような心地よさはある。明瞭なサビに乗せて「Baby Say Goodbye」と歌われるラストも、The La'sのLookin' Glassを思わせるような加速力で波の彼方へと消えていく。基本、トップスピードのままで、でかい音で聴くにはうってつけのサマー・アルバムだ。
ただ、前作にあったオルタナ・オブ・オルタナな「ぶっ壊れ」感が失われてしまったことはやや勿体ないような気がする。耳障りの良さなんか全く無視したような凶暴メタル・サーフはシーンの中でもかなりの異彩を放っていたから。それでも、ネイサンのポップセンスが非常に高いレベルにあることは、このアルバムで明らかになったし、もっと注目されてもおかしくないクオリティーを持っていると思うのだが。
おすすめ度★★★★(18/09/10)