Total Life Forever/Foals | Surf’s-Up

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 次世代ロックの担い手、Foalsのセカンドアルバム。 前作「アンチドーツ」からすでに高い評価を受けているバンドであるが、個人的に「アンチドーツ」は偏差値の高さがどうにも鼻についてダメだった。明らかに好きな音なんだけど、当時は「試金石」的な作品に見えて、どうしても聴くことに抵抗を感じてしまった。単なる自分の勝手なんですが。


 というわけで、セカンドこそちゃんと聴くべきだと、またまた自分勝手にそう思い購入。もちろんいいんです。こういう音好きなんです。深海に向かって身を沈めていくメンバーがジャケットになっているが、その画が象徴するように、「意識」という名の海の中で自分たちのエモーションをしなやかな音で体現している。

 その基調となるのが、ややトライバルに進行していくビートと繊細なギターサウンド。メランコリックになるギターに、牧歌的なヴォーカル。思わず「Fleet Foxesか?」と思ってしまうのだが、徐々に醒めたダンスビートが展開していくBlue Bloodで幕を開ける。この曲のほのかに香るメランコリアがこのアルバムの方向性を象徴しているのかと思ったら、そんな事はなくてその後はリズムラインで適度に遊びながら、彼らなりのファンクネスを体現したMiami、明快なリフから最後は深海へときりもみしていくBlack Gold、性急なビートとダイナミックなメロディーがかっこいいThis Orient,うねるトライバルビートに暴力的なギターがからみつくAfter Glow・・・と幅広いサウンドを展開している。


 リードトラックであるSpanish Saharaにしてもメロディーの力で過度にメランコリアを発生させようとはせず、バックトラックを構成する無機質な音たちが有機的に変貌していく姿で高揚感をもたらそうという意図が感じられる。そういう意味では「わかりやすい」作品ではないと思うが、決して後退したのではなく、深化したのだと思う。


 結果、ギターロックの快楽性やダンスビートの刹那な感じがより焦点化されて、脳と体に効くロックへと結実させることに成功している。その方向性はすごく良いと思う。期待したサウンドスケープの壮大さはやや物足りなかったが、逆に「伸びしろ」という部分で大いに期待が持てる。

 最後に。自分は輸入盤の2枚組限定盤を買ったが、これが興味深い。ボーナスディスクはデモ集というか、制作過程の様子がうかがえる、収録曲の断片集となっている。ギターのリフばかりなのだが、そこから1曲完成するまでにどう拡がっていったのか、そんなことを想像しながら聴いてみると楽しい。


 おすすめ度★★★★(12/06/10)