Northern Portrlaitは2007年にデンマーク・コペンハーゲンで結成された5人組。2枚のシングルを経て、今作がデビューアルバムとなる。常々思うことだが、北欧というのは欧米に比べて音楽的に自由度が高いように思う。理由はよく分からないが、影響を受けた音楽、リスペクトしているアーティストに対して素直なアプローチをすることが許容されているように感じるのだ。
かつてのカーディガンズやアトミック・スイング、今で言うとマンドゥ・ディアオ。彼らは「向こう側の音楽」を作品、映像やメディア、雑誌でしか知ることができない。遠いところにあるが故に憧憬の気持ちが純粋培養されていく。その結果、バックボーンがダイレクトに伝わってくる作品を生み出すことが出来るのだと思う。
このNorthern Portraitもまさにそんなバンドだと思う。シンプルなカッティングやアルペジオを多用したギターサウンド。メロディアスというよりは流麗なメロディー。一聴してみて間違いなく思い浮かぶのはThe Smithsであり、Trash Can Sinatrasだろう。ファルセットを交えながら、朗々と歌う様はモリッシーぽいというか、そのもの。ただ本家よりは若干優しげ。That's When My Headaches BeginやLIFE RETURNS TO NORMALは意地悪な見方をすれば「よくできた贋作」というように映ってしまうかもしれないが、個人的には自分たちなりに好きなテイストを突き詰めていった結果だと感じる。
また、THE OPERATION WORKED BUT THE PATIENT DIEDやNEW FAVOURITE MOMENTといった曲にある音全体から伝わってくる、無邪気な「キラキラ」はTrash Can Sinatrasを想起させる。混じり気の無さ、イノセンスで鳴らしているという感じの真っ直ぐなギターサウンド。心地よさと清涼感に溢れている。
日本盤には3曲ボーナストラックが収録されているが、かなり魅力的な曲が並んでいる。特にI GIVE YOU TWO SECONDS TO ENTERTAIN ME は名曲だと思うので、買うならこちらをお勧めします。
派手さもないしシーンの中心になることもないだろうが、個人的にはすごく心が落ち着くサウンド。5月はこれのおかげでちょっとがんばれたという個人的な思い入れもちょっとあるアルバムです。
おすすめ度★★★★(06/06/10)