Travellers in Space And Time/The Apples InStereo | Surf’s-Up

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 The Apples In Stereo、通算7作目。ギターポップの甘酸っぱさ、半端無いドライブ感、そのどれもが一級品だった前作「New Magnetic Wonder」は個人的に2007年一番よく聴いたアルバムだった。そして、おそらくかなりの音楽オタクでビーチ・ボーイズ好き(推測ですよ)であろう、ロバート・シュナイダーの才能の特化を見事に成功させた初めての作品でもあるように思う。
 そういった事からも個人的にはかなり期待して待っていたニューアルバムである。で肝心の内容であるが、近未来テイストを元に楽しいポップミュージックが満載となっている。


アルバムのコンセプトであるSF調の世界観を作り上げるために,ギターポップの勢いを生かした前作よりはややシフトを落とし、シンセを中心にシュガーコーティングされた甘いメロディーが並んでいる。


 サウンドに合わせて曲調も、ギターポップから、ダンス/ソウルテイストの濃いものが多い。それらをスペイシーにアレンジしたり、ディスコティックにまとめあげるなど、現実世界からちょっと離れたような、近未来のテーマパークにいるかのような感触を聴き手に感じさせようという意図が感じられる。 


 前半はひたすらスイートに、そして後半からは少しずつ甘さを抑えたシンフォニックな曲が占めていくようになる。テーマパークの享楽と終末感を曲の流れで演出している。個人的にはリフ一発勝負のロックンロール、Dignified Dignitaryやシンプルな構成でベースラインが印象的なNobody But Youといった後半に並ぶ曲が好き。


 質的には高いことはよく分かるが、ただ、個人的には前作にあった前のめり気味の勢いがなくなったことが残念。あのがむしゃらなドライブ感があってこそ、ロバート・シュナイダーのポップ性が生きるように思っていたのだが。どうも自分には甘すぎる。後半のビターさをもう少し全体に効かせて欲しかった。


おすすめ度★★★☆(29/05/10)