ブルックリンの新鋭から、世界中で熱狂的に支持されるユニットとなったMGMTのセカンド。「サーフィンと名声」がメインテーマとなっている今作であるが、共同プロデューサーにソニック・ブームを迎え制作された。
なぜサーフィンと名声なのか、ということであるが、彼ら自身が「オラキュラー・スペクタキュラー」の大ヒットによって「名声」という名の波状攻撃を受けていたわけで、そんな中で自分を見失わないように、サーフィンするがごとく軽やかに自分の音楽を鳴らしたいという思いがあったようである。
1stでも分かるように、ひねくれっぷりがすでに堂々としている彼らであるが、あくまで根底にあったのは強烈なフックを持ったメロディー。だが、今作ではどの曲も過度に強調されることのないメロディーとリフレインを多用した作りになっている。明らかに前作に比べると地味に聞こえるかもしれない。
サーフ・ロック的な要素が強い曲は多いが、サーフィン・アルバムというよりは,前作同様やはりサイケ・ポップという印象が強い。それでも、全体を聴いて感じるトータル感はより強くなった印象だ。そして、全体を包む心地よいグルーヴ感。9曲45分間というコンパクトさもあって、最後まで適度な緊張感を失うことなく完結している。サーフ・ロックという形の利点を十分生かした作品となっている。
しかし、そういうノリの良さを借りて、彼らは大きなメッセージを放ち続けている。言葉遊びで幾分ぼかしながらも、彼らは徹底的に今の時代の居心地の悪さを歌い続けている。つまりはちっとも心地よくないことを歌いたくてこういうサウンドにしたのだ。
だけど俺の幸運なんてくそくらえ
ごますり笑顔でやってくる友人たちもくそくらえ
優雅にふるまってみてもどこか俺もうしろめたい(ギルトな)気分
だから俺は芝生にキルトしいて寝ころんで
腕を広げ、おめでとう、とお祝いの言葉を浴びるだけ
エンディング曲Congratulationsで彼らは最後にこう歌う。賞賛を浴びることは、自分たちに何ももたらしてはくれない。そんなわかりきった「虚無感」を、独特の言葉と巧みなコラージュ・ロックで描いている。個人的には前作より好き。
おすすめ度★★★★☆(25/04/10)