Go/Jonsi | Surf’s-Up

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Sigur Rosのフロントマン、Jonsi初のソロアルバム。この前にアレックスと「ライスボーイ・スリープス」というアルバムをリリースしている。こちらはかなりアンビエントな内容で、Sigur Rosの「静的」要素を更に突き詰めたような作品であった。


 そして、いよいよソロ名義のアルバムが誕生したわけであるが、Goというタイトルからも感じ取れるようにJonsiの今のモードが、「今までにない何か」を探求しようというところに来ているのではないか、と思わせるような作品になっている。


Sigur Rosの「残響」でもサウンドのポップさ、ポジティヴさが際だっていたが、このソロではさらにあっけらかんにオーガニックなポップネスがはじけている。妖精がささやきながら「その先」へ行くことを誘うGo Do。英語で書かれた詞のポジティヴィティーもちょっと今までの彼からは想像がつかないテイストだ。


 そして、耳を引くのはリズムライン。今回のアルバムを作るに当たって、現在Mumの一員として活躍しているドラム/パーカッショニストのサムリ・コスミネンが参加しているが、彼がむちゃくちゃ良い仕事をしている。Animal Arithmeticでは重厚で力強いビートに度肝を抜かれる。Boy Lilikoiでは、いろんな管楽器とスペクトラムなドラムが絡み合っている。とにかくJonsiの描く世界観と堂々と渡り合っている様が本当に素晴らしい。


 リズム以外でも様々な冒険が試みられている。Grow Till Tallではストリングスとノイズが鬩ぎ合いながら美しいメロディを紡いでゆく、ポスト・ロック的な1曲だし、Around Usはリピートされるリズムトラックとメロディーがトランスに近い恍惚感を与えてくれる。


 様々なアイディアが盛り込まれたアルバムとなっているが、人が変わったんじゃないかと思うくらい、Jonsiが自信を持って今の音を鳴らしているということがこの作品から伝わってくる。Jonsi自身のパーソナリティー、生身なところがダイレクトに感じられる。


 Sigur Rosでは「やれそうでやれない」こと。お互いが絶対的な世界を持っている中で、ギリギリのところで交わり合っているSigur Rosではここまで思い切ることは難しいのだろう。適度な遊び感もあって、とても聴きやすい作品なのではないかと思う。


 個人的に一番好きなのはTornado。壮大なスローナンバーであるが、ヨンシーのため息の出るようなヴォーカルから壮大なオーケストレーションへと拡がっていく、このアルバムのハイライトの一つ。今作の中で一番Sigur rosのテイストに近いのは少々皮肉か。


おすすめ度★★★★☆(17/04/10)