すっかりベテランの域に達したOcean Colour Sceneの通算9作目になるアルバム。ブリットポップ時代から、頑なにモッドな音を追求してきた彼らであるが、近作では少しずつサウンドの幅を広げてきている。今回のニューアルバムでは、その幅が更に拡大。兄貴分Paul Wellerも22Dreamsというバラエティー感のあるアルバムをリリースしているが、OCSのこのアルバムもひけをとらない出来となっている。
オープニングの100Floors Of PerceptionはR&Bテイストにストリングスの味付け、グルーヴィーに展開するロックチューン。2曲目Mrs Maylieはハイな流れから途中からメロウでリリカルな歌へと変わり、また元へと戻っていくという異色の1曲。3曲目は爽快なアッパーチューン、Saturday。パオロ・ヌティーニが参加したというこの曲。メロディーのポップさは過去最高レベルで、しかもアレンジもバリトンサックスが入ってとっても爽やか。サイモンのソウルフルな歌がなければ、OCSの曲には聞こえない。そして、4曲目Just A Little Bit Of Loveは「ほんのちょっとの愛」というタイトルが予感させるように、直球の泣きのメロディー。5曲目Old Pair Of Jeansはロックンロールなリフとソウルっぽいメロディーラインが印象的で・・・
と、言った感じでかなりてんこ盛りな内容のアルバムとなっている。ただ、共通しているのは各曲の「抜けの良さ」。様々なアレンジや曲調を通して、メロディーがダイレクトに伝わってくる。そもそも抜群のメロディーセンスがこのバンドの武器であるが、このアルバムではとても自覚的にその武器で勝負している感がある。そして、今となっては時代錯誤なのではないかというくらいシンガロング系の曲が並んでいる。今なかなか口ずさめる歌が少ないと言われている中で、どの曲も大合唱が起こりそうなくらい明快なロックチューンが詰まっている。
Ipodに自分のお気に入りの音楽だけを詰めて聴く。それも悪くないが、でっかい音で窓を開けて聴いてみないか。僕には彼等のロックがそう言っているように感じる。密室を一つひとつこじ開けて、手をつながせようとする、ある種の暴力性なのかもしれない。一人でかみしめるというよりも、共有したくなるようなアルバムではないだろうか。
個人的には期待以上のメロディーの質には脱帽。昔から変わらず、UKの伝統を踏まえながら男気溢れるロックチューンがこれでもかと繰り出されるのも素晴らしい。ただ、満腹感が割と早い段階で訪れてしまうので、曲数が少し多いのでは、と感じたのも事実。ボートラを含めると16曲。多いと言いながら、このボートラも実に良い曲なので、日本盤をお勧めします。
おすすめ度★★★★(13/03/10)