Raditude/Weezer | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Surf’s-Up Weezer通算7作目のアルバム。前作「Red Album」から1年ちょっとのインターバルということで、彼らにしては早いスパンでのリリースとなった。前作はロックオペラ調の曲に挑戦するなど音楽的冒険を見せつつも、彼ら本来の楽曲の良さをさらに突き詰めたような作品であった。また、リヴァース以外のメンバーによる楽曲もあり、それらの完成度に刺激されるようにリヴァースの楽曲にも躍動感がみなぎっていた。


 今作ではパット・ウィルソンだけではなく、なんと外部のコンポーザーとの共作曲が数多く存在する。リヴァース・クオモという稀代のソングライターがいるにもかかわらず、さらに「門戸開放」政策をとったというわけだ。プロデューサーは、ジャックナイフ・リーとブッチ・ウォーカー。ジャックナイフ・リーはわかるが、ブッチ・ウォーカーはちょっと意外な人選のようにも見える。しかし、「良い曲」であればロックもポップも関係ないのがWeezer。BoAだってすんなりカバーしちゃう彼らであるから、その辺は全く問題なかったのだろう。


 というよりは、アルバム全体を包んでいる「聞きやすさ」はブッチの仕事なのだろう。どの曲もロックとしてのエッジを残しつつも、ポップな柔らかさを感じさせる。肩の力が抜けているというか、Weezer Classicとも言うべきどこを切っても良質なメロディーがこのアルバムには溢れている。乱暴な言い方をすると、Weezerのアルバムでは、この点がクリアされていればあとはどうなってもOKだ。


 音楽性から見ると、前作のバラエティー感は今作でも踏襲されている。オープニングI Want You Toはアップ・ビートで軽快な曲調が、始まりにふさわしい曲。もともとポップなところはあるが、ここまではじけていることはこれまでもあまりなかっただろう。Put me Back togetherでは「僕は使えない道具」と歌われる、受け入れてほしい想いをシリアスにぶつけた曲。80年代のポップの要素もちらほら見られるが、一番おもしろいと思ったのはLove Is The Answer。シタールのイントロから始まるラーガ・ロック。ジャックナイフ・リーとの共作である。


もちろんI'm Your Daddy、Trippin' Down The Freewayのように「これぞウィーザー」というべきタイトにロックしているナンバーも。エンディングは切実な想いを柔らかなヴォーカルに乗せて歌うI Don't Want To Let You Go。日本盤には1枚目にボートラが2曲、2枚目には4曲ついているがこちらも秀逸です。


 強烈な印象を残す曲はないものの、クオリティーは実に素晴らしいと思う。ただ、外部との共作が多い点については、絶対君主として君臨してきたリヴァースの、この「歩み寄り」が若干気になるのも確か。これまで、Weezerが他のパワー・ポップと一線を画していたのは曲のクオリティーはもちろんのこと、僕はリヴァース・クオモという人間そのものをありのままに投影しているからだと思うのだ。変な言い方をすれば、リヴァースから生み出される「僕だけの物語」こそがこのバンドの魅力ではないだろうか。そこが失われてしまうのには少々抵抗を覚える。


 でも、もうすでに17年というキャリアを重ねたバンドであるので、そこまでのストイックさを求めるのは酷だろう。むしろ、あえて「垣根」をもうけないくらいのスタンスの方が、こういう瑞々しいポップを作り続けられるのかもしれない。いずれにせよ、パワー・ポップに食傷気味の僕でも聴けてしまう、いいアルバムです。


おすすめ度★★★★(10/11/09)