Never Cry Another Tear/Bad Lieutenant | Surf’s-Up

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 バーナード・サムナーの新バンド、Bad Lieutenantの1st。New Orderが事実上解散を迎えた中、フィル・カニンガムら、バンドとともに活動してきたメンバーと、ジェイク・エヴァンスという新たな血が融合して出来たバンドである。


1曲目Sink or Swimのきらめくイントロだけで、そこには極上のギターロックがあることがわかる。「沈むのか、泳ぎ切るのか?」というタイトルは、New Orderが座礁状態にある自分自身への問いかけのように取れる。


This Is Home、Poisonous Intent、Walk On Silver Waterのように、もろNew Orderかという曲もあり、バーニー自体がニュー・オーダーと違う音を出そうしているわけことはわかる。しかし、アルバムを通して際だって聞こえるのは先ほどのSink Or Swimだったり、流麗なメロディーとバーニーのまろやかなヴォーカルのRunawayなど、シンプルなギターサウンドの曲たちである。そして、ジェイク・エヴァンスがヴォーカルを取る曲が数曲あるのだけど、バーニーの繊細さと対照的に野太い無骨な歌声を聞かせている。特にHead Into Tomorrowはアコギだけの男気溢れる渋いナンバーだ。これだけ聴いたら、とてもバーニーの新バンドの音だとは思わないだろう。


 そういった側面からわかると思うがこのバンド、決してフッキー抜きのNew Orderではない。後期New Orderで見られたギターサウンド中心のロックが下地ではあるものの、不思議と両者に似ている感じがない。フッキーがいない分なのか、エレクトロ、ダンスの要素は格段に後退し、ソリッドなギターサウンドが以前に増して押し出されている。そのせいか、アルバム全体を通して感じる印象もすごくポジティブなものだ。また1から始める喜びに溢れているというか、New Orderにある緊張感はないものの、音一つ一つが輝いているように感じられる。


 少々残念だと思うのは、似た曲調のものが多いせいか全体を通すとインパクトがやや弱めなところ。サウンドの振れ幅が小さいというか、ギター・ロック主体であればもう一つか二つアクセントとなるナンバーがほしかった。しかし、バーニーが今これだけ音楽に対してポジティブに取り組んでいることがわかるので、これはすごく嬉しい。


 おすすめ度★★★☆(15/10/09)