Popular Songs/Yo La Tengo | Surf’s-Up

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 Yo La Tengo3年ぶりのニューアルバム。通算12作目。まさに大ベテランの域であるが、R.E.M.といい、このYo La Tengoといい、いつまでもロックに対して良いスタンスで作品を作り続けている。野心的であっても決して聴き手を裏切ることはない。それはロックバンドとして一つの理想的な形だろう。


 前作はどちらかというとYo La Tengoサウンドの集大成というか、振れ幅の大きいフォーマットのサウンドが集合していたが、今作はそれに比べると焦点が絞れている。



 オープニングのHere To Fallこそスリリングで緊張感のあるテイストであるが、その後は聴きやすい楽曲が並んでいる。柔らかなAvalon Or Someone Very Similar、ジャングリーなギターポップNothing To Hide、ハモンドオルガンが60年代UKサウンドを感じさせるPeriodically Double Or Triple、思わず「ベルセバか?」と思うくらい品のあるポップIf It's Trueなど、甘いメロディーとけだるい歌声と演奏が醸し出す心地よさに溢れている。ヴォーカルがはっきりしている曲も多く、今までの中で一番聴きやすい作品かもしれない。



 しかしながら、アルバムの終盤、11曲目と12曲目はともに10分以上に及ぶ長尺ナンバー。The Firesideはトーンの重いアコギが延々と続く。しかしながら、映画のサウンドトラックのような描写力を持ったナンバーだ。ラストのAnd The Glitter Is GoneはこれまたYo La Tengoなら全然ありな、ギターノイズの咆吼をバックに豪快にメロディーが展開していくナンバーだ。これだけ聴いたら、まさにポストロック。フリーキーに昇華していく様は快感この上ない。



 それでも、この2曲もこれまでの作品からしたら聴きやすい部類だと思う。はっきりしているのは、決して商業的に意識されたキャッチーさではないということ。自分たちの素養を素直に音にしている感じがバシバシ伝わってくる。そのセンスに長けているところが、このバンドの武器なのだろう。



 おすすめ度★★★★(14/10/09)