Pastels12年ぶりの新作は、日本のテニスコーツとの共作。「Illumination」からもうそんなにもなるのか。TFCのジェラルド、ノーマンが全面的に参加と、どうにもグラスゴー人脈が生かされた一枚である。
どうしても、自分なんかはPastelsという名前にアノラックな音を期待してしまうんだけど、そういう音はここにはない。代わりにあるのは、日溜まりの中にいるような、暖かみのあるポップ。
オープニングの「Tokyo Glasgow」は映画のテーマソングを彷彿とさせる、アンピエントな曲調。しかし、2曲目Two Sunsetsから次第にたおやかなポップの側面を見せていく。3曲目のSong For A Friendで聴ける、よれっよれのギターはまさにPastels。シュガーコーティングされたギターノイズがなくても、Pastelsの持つ天然のポップセンスが端々から感じられる。
全体的に見ると、どちらが主導というわけでもなく、互いにバランスを取りながら音作りをしているなと感じる。強い信頼関係があるのだろう。テニスコーツのさやの牧歌的ヴォーカルをフィーチャーしたものは、日本語の切れ方が独特で浮遊感のあるポップに聞こえる。逆にスティーブンやカトリーナをフィーチャーしたものは、適度に脱力した感じが日々の生活の安らぎや憂いをリアルに表現しているように聞こえる。サウンド的には統一感があっても、不思議とアルバムの世界観は二面性が存在しているように見える。
個人的にはPastelsのサウンドを想起させる、VIVID YOUTH,About You、Sodane(そうだね)あたりが好き。グラスゴーの風を感じる緩やかなギターサウンドは、いつだって自分の心を切なく熱くさせる。
ただ、個人的にテニスコーツの日本語詞がどうも際だちすぎに見える所もあった。これは僕が、どうも短いセンテンスを並べるような歌詞が苦手だったりするせいなんだろうけど。
おすすめ度★★★☆(28/09/09)