Sing Along To Songs You Don't Know/MUM | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Surf’s-Up MUM通算5枚目となるアルバム。主要メンバーが抜けた後に制作された前作「ゴー・ゴー・スメアー・ザ・ポイズン・アイヴィー」では開放的なポップスへシフトし、新生MUMの始まりを告げるアルバムとなった。アイスランドという秘境的な場から紡ぎ出される幻想的でドリーミーな音は世界を魅了してきたMUMであるが、こういう個性的な音からポップへの歩み寄りを見せることは、ある意味勇気のいることだと思う。


 しかしながら、彼らは前作でそれをやってのけた。そして今作は、基本的には前作の延長線上ながらも、より大胆にポップへのアプローチを強めている。楽曲そのものをコンパクトなサイズに納め、箱庭的ポップワールドを展開している。親しみやすさも過去最高であろう。アコースティックな楽器、ホーンやストリングス、マリンバなど生の楽器の温もりと、ミニマルなエレクトロ、ブレイクビーツのもたらす緊張感を上手く融合させているところはさすが。明らかにかつてのMUMとは違う世界観だが、今の開かれたMUMの方が個人的には好きである。


  シガー・ロスやビョークらにも共通して言えることだが、北欧のアーティストの作品には、命宿るものの生命力をテーマにしているものが多い。僕的に分析すると、北欧自体自然があるがままの形で残っていることが多く、寒さなど、生きる営みに対する条件が厳しい土地である。それ故に、強い生命力が要求される。また、強い想像力も。タフに生きるしかない環境に身を置かれている分、言葉や表現にリアリティーがあるのだ。


 だから、幻想的、寓話的なものをモチーフにしながらも、感じられるものは恐ろしくリアルだ。7曲目「フラバラバルー」(ガヤガヤという意味らしい)は、沸き立つ生命力を感じさせる感動的な1曲であるが、地上の全ての生命から放たれるオーラが、舞い上がっていくような光景が目に浮かんでくる。ますます洗練されて、かわいらしさも身につけてきたが、そこんじょそこらのポップバンドとは明らかに違う色遣いだ。全ての色が眩しい。

 

 おすすめ度★★★★☆(09/09/09)

 


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