英国はウォルバーハンプトン出身の4人組。1stに当たる今作は、メンバー全員まだ二十歳そこそこということで、非常に若々しいポップソングにあふれたアルバム。こういうと、なんて平坦な表現なんだと思われるかもしれないが、聴いてみたら「なるほど!」と思うでしょう。本当にまっすぐで、自分たちの好きな音楽を「これでもか」とばかりに詰め込んだ、という感じ。そういう物を世に出すのは勇気がいることだし、まして否定されたら自分たちの行き場所がなくなるわけで、相当の覚悟が必要だと思う。
プロデューサーは、ライトニング・シーズのイアン・ブロウディ。なんとなくポップよりな作品を多くプロデュースしている印象があるが、コーラルなんかも手がけており、いわゆるバンドの持つポップな側面を個性に合わせて引き出すことに長けているのかなと思う。そういう意味では、実に適材適所な人選だと思う。
パーパパパー♪というコーラスが頭に残るMy Precious Valentineで幕が開ける。非常にインパクトの強い曲であるが、それ以外にもコーラルがやってもおかしくないような、アコギとシンプルなビートが持ち味のHeartBraker、スペシャルズやマッドネスを思わせるスカ,Just Another Bad DayなどUKロックのおいしいところをそのまま持ってきたような曲が詰まっている。直情的でありながらも、どこか洗練されたポップネスを感じさせるところがこのアルバムの魅力だろう。ゆえに、一見ありふれたようなポップソングのようでありながら、最終的には彼らのオリジナル性も同時に感じられるのだ。
個人的にはギターのメロディーラインがアクモンの1stみたいなCharmless Spiesが一番好きで、Lock Up Your Daughterもそれに近い。もっとこういう曲が聴きたかったが、それではやはり芸がないし、このバンドの本質も見えづらくなってしまうだろう。
惜しむらくは、ドラムの弱さが少々気になるところ。もっとタイトにしっかり刻んでほしいところや、もう少しおかずがあれば、というところがどうしても見えてしまう。僕はリスナーの中でもあんまり演奏のレベルを問わない方だと思うのだが、そんな自分でさえ気になってしまった。
しかしまだまだ若いので、そういう課題は今後いくらでもカバーできるだろう。個人的には今の路線を継続しながら、心をとらえるポップソングを量産するバンドになってほしい。
おすすめ度★★★☆(29/07/09)