ジャック・ペニャーテのセカンド。前作はギターポップの心地よさ、全ての憂鬱を吹き飛ばすようなポップネスが全開のアルバムで、よく聴いた一枚である。
ほとんどのアーティストにとって勝負となる2作目。「全てが新しい」というあまりにもわかりやすくて思い切ったタイトルであるが、その通り、前作で聴かれたはじけるようなポップナンバーは皆無である。1作目が成功しただけに、同じ路線はなかなか歩めないのはよくわかる。しかしながら、大胆なシフトチェンジは正直想定していなかった。
どう新しくなったのかと言えば、オープニングPull My Heart Awayでは、ややコンプのかかったメランコリックなギターが炸裂している。80’sテイストの叙情的ポップナンバーともいえるこの曲が特殊なのかといえば、全然そんなことなくて、続くBe The Oneもイントロのシンセ、隙間の多いサウンドとやはり80年代を思わせるような1曲。その次のEverything Is Newは大陸的なビートにエモーショナルな歌、種々の民族楽器が加わり祝祭的ムードを醸し出した1曲である。かつてのTalking Headsのようにも聞こえる。
アルバム全体は雑な言い方をすると、80年代に流行したポップ・アレンジのワールド・ミュージックみたいな感じ。ラテン、アフリカなど土着的なビートを駆使し、濃厚でありながら決して「なりきる」ことなく、踊ってもよし、腰を据えて聴いてもよしという品のあるポップスへと仕上げている。
新機軸と言うことなのだろうが、その変化はあまりにもドラスティック。ジャックらしさが全くないというわけではないが、強いて言えば「わかりやすさ」だけは継承されているように思う。でも、これは個人的な考えだが、ジャックにはもっとやるべき事があるような気がしてならないのだ。
アルバムの内容が悪いというわけではない。ただ、ギターを弾きまくって世の中の悲しみを塗りつぶしていくような極彩色のポップを期待していたので、このアルバムを包む「シリアスさ」をどうもうまく受け止められそうにないのだ。もっと、ギュンギュンにギターを弾いて欲しかったな。
おすすめ度★★★☆(12/07/09)