Sonic Youth3年ぶりのニューアルバムは20年ぶりにインディーズからのリリースとなった。サーストンはライナーノーツの中で、レーベルのことを「がんじがらめの収容所」と表現しているが、最近は彼らにとって居心地のいいものではなかったのだろう。前作「Rather Ripped」も素晴らしいアルバムであったが、今作を目の前にしてはいささか印象が弱くなってしまった。
元ペイヴメントのマーク・イボルドをメンバーに加え制作された今作。まず1曲目Sacred Trickster。不協和音的なギターから攻撃的に展開していくこのナンバー。ギターロックならではの切れのいいサウンドとキム・ゴードンの挑発的なヴォーカルがかっこいい。前作よりも、ソリッドさが増して無骨でざらついた彼ら本来のサウンドが展開されている。サーストンの雷鳴のようなギター、自由奔放に飛び回るノイズは冴えに冴え、もはや不可侵の領域に達したと言えそうなほどである。
しかし、前作で見せたポップな側面も健在で、Antennaでの枯れたメロディーとサーストンのヴォーカルが胸を打つ。1曲1曲のテンポの良さも継承されていて、「Rather Ripped」で得た手応えは大きかったことが感じ取られる。
そして、このアルバムのすごいところは、何をやってもSonic Youthなところである。まさに「Sonic Youthの音」としか形容できない、ギターロックの理想型がここにはある。Sonic Youthは突出した個性という意味では極めてアート的なバンドであるが、音楽性の高さをここまで見せつけるアルバムを作るとは正直想像していなかった。
「丸くなる」というのとは違う、円熟したサウンド。しかし、円熟しているのにすごく瑞々しく感じられるのだ。活動を始めてから30年近く経つのに、こういうアルバムを作ってしまう。それは途方もなくすごいことだと思うのだが、どれだけの人が共感してくれるだろう?そんなことは、どうでもいいか。
36歳の大人でさえ、爆音で聴きたくなるロックアルバム。以上。
おすすめ度★★★★☆(15/06/09)