Doves、4年ぶりの新作。Dovesとして活動する前にテクノ・ユニットとして活動していたことはよく知られているが、そのころから数えると相当長いキャリアを積んでいることになる。マンチェスターというシーンの中心的都市で、マイペースに音楽活動を続けていること自体すごいことなのだが、良質な作品を生み続けることはもっと賞賛に値する。実際Dovesとしてデビューし、「Lost Souls」が絶賛の嵐で迎えられたときから、彼らが駄作を生み出したことはない。2nd、3rdとそれぞれ独特の方向性を出しながら、シーンに左右されることなくDoves印のサイケデリック・ミュージックを作り出してきたその姿勢も、かっこいいなと思う。
そしてこの4thアルバムも、そんな信頼を裏切ることなく、「裏マンチェ」とも言うべき様式美を湛えたサイケデリック・ミュージックが全開の1枚である。
どこか哀愁を感じるメロディーラインは健在。歌ものとしてのフックは抑えめであるが、その分曲全体の流れの繊細な部分がすごく伝わりやすくなっている。また、ドラマチックなアレンジの曲が多いのも今作の特徴だと思う。
トラックのバラエティー感は過去最高といって良い。オープニングのJetstreamは過度に熱くならず静かに高揚していくミドルナンバー。2曲目Kingdom Of Rustはウエスタンソング風でありながら、重厚なストリングスとメランコリックなギターに胸が締め付けられるような1曲。3曲目The Outsidersは一転してアグレッシヴなロックナンバーと実に様々な曲が存在する。ちなみにWinter Hill,10:03の2曲はあのジョン・レッキーがプロデュース。10:03の後半、怒濤のクライマックスへとなだれ込んでいくようなサウンドはまさに彼のお得意のパターンだろう。個人的におもしろいと感じたのは80年代フロアサウンドを、Doves風に味付けしたCompulsion。
というように、まとまりという点では、これまでの中で一番希薄な作品かもしれない。しかし、どの曲も実にDovesらしいと思わせるのも確か。決して一筋縄ではいかない、喜びの裏にある「悲しみ」、またはその逆にある感情、そういったものを見事にサウンドで表現していると思う。この表現力たるや彼らは実に高いものを持っている。
そこを熟練した技でもってがっちりと積み上げ、強固な世界観を作り上げているのはさすがの一言。素晴らしい作品です。
おすすめ度★★★★☆(05/05/09)