NY,ブルックリンを拠点とするAsobi Seksuの3rd。音楽雑誌等ではネオ・シューゲイザーの旗手として取り上げられることも多いこのバンド。アメリカ人男性と日本人女性のユニット(かつてはバンドだったらしい)である。ただ、例えばマイ・ブラディ・バレンタインみたいなものを期待したら間違いなく肩透かしに終わる。唸るフィードバックノイズに身を任せたい、そんなことを期待してもやはりだめだ。
あえてカテゴライズすると、サイケでドリーミーなポップというほうがしっくりくると思う。シューゲイザーというよりはバックトラックはポストロックに近いかもしれない。重厚なタイプではなくて、ほどよく隙間のあるタイプである。そこにフックの強い歌メロがバランスよく絡んでいる。
穏やかなオルガンに柔らかな歌声が響く聖歌のようなLayersで幕を開けるが、2曲目Familiar Lightから様相が一変する。祈りのようなユキの歌声はそのままだが、サイケデリックなシンセサイザーに乗って、より破壊力と開放感を演出している。そして、地を這うようなトライバルなビートに、エモーショナルな歌メロのSing Tomorrow's Praiseでその祈りは頂点に達する。4曲目Glissからは少しシフトダウンして浮遊感のあるポップが続く。その後はシンフォニカルなIn The Sky、Deerhunterのような漆黒のトラックに日本語の歌詞で歌われるMeh No Mae(メノマエ)、叙情的で美しいI Can't See、展開がネオアコっぽいMe&Maryなど幅の広いサウンドを聴かせる。
ライナーノーツを見る限り、二人の音楽性の嗜好に違いがあって、融合することで独特の世界観を形成しているという印象を受ける。お互いに主張しすぎないところがまたいいような気がする。認め合っているというか、互いの良さを自分が引き出すというようなスタンスがすごく感じられる。日本人である自分としては、日本語歌詞が若干恥ずかしく感じられるところもあるが、女性ヴォーカルが苦手な自分がここまで入り込めたロック作品はそうはない。
おすすめ度★★★★(16/02/09)
Me&Mary