Fleeting Joysのセカンド。男女(夫婦)のユニットで、サイケデリックなシューゲイザーサウンドを奏でる。渦を巻くフィードバック・ノイズと甘美なメロディー、女性ヴォーカル、マイブラが形成したスタイルをほぼ完璧に近い形でなぞっている。
シューゲイザーの魅力はなんと言っても二律背反の極みがもたらす暴力的なまでの快楽性だと思う。そして、その非現実的な空間が、聴き手をどこか遠くへと連れて行ってくれるのだ。その「連れて行かれる」感じが、何とも心地よい。人間、現実の中で快楽に陶酔するのはなかなか難しいし、どことなく罪な感じがするものだ。だから、非現実的な空間でなければ、なかなか陶酔できないのだ。だから、シューゲイザーの「ぶっ飛んでいる感じ」というのは、快楽主義な自分にとっては必要なものなのだ。
で、そんな自分なのであるが、総合するとなかなかいいアルバムだと思うし、聴いていて先ほど述べた快楽性もきちんとある。
二人とも最も影響を受けたアルバムとして、当然のようにLovelessを選んでいる。シューゲイザーだけでなく、UKロックの金字塔とも言える傑作アルバム。そのLovelessの世界を自分たちなりに体現しているのがよく伝わってくる。僕はそれ自体は悪いことだと思わない。むしろ、隠さずにそれを表に出しながらも真っ正面からその「怪物」に挑む様はすごいと思う。
ただ、あまりにもマイブラ過ぎるところ、ひねりがないところはやはりマイナスに感じられる。つまり、気分によってはマイブラじゃなくてFleeting Joysを聴きたいと思わせるような求心力をサウンドに持たせてほしいのだ。残念ながらそこまでの力はまだ無いし、当然マイブラを超えることもないだろう。
非常に惜しい。
おすすめ度★★★(02/02/09)