Moonwink/The Spinto Band | Surf’s-Up

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音楽の話を中心に。時にノスタルジックに


 前作「Nice And Nicely Done」が出たのが折しも、Clap Your Hands Say Yearが大注目されていた頃で、DIY精神を持ったロックバンドの一つとしてThe Spinto Bandもとらえられていたように思う。


 こういうバンドのいいところは、適度なチープ感があるところだと思う。あまりにも濃密、あまりにも高級なものは合わない、という人もいるだろう。職人の手仕事、という感じではなくて、好きな人たちが集まって老舗の味を思い浮かべながらつくったようなところが逆に良かったりもする。ある種の「未完成感」のもたらす心地よさとでも言おうか。


 The Spinto Bandを聴いていると、自分たちの隠れ家で、わいわいやりながら作っている姿が何となく想像される。つまりは作り手の顔が見える音楽なのだ。彼らは昔からの知り合い同士で結成されたとのことだが、音楽からもその気さくな関係性みたいなものが伺える。小難しく考えずに、楽しみながら作る音楽だってあるんだと言わんばかりに楽しいポップアルバムが完成した。


 この新作も、相変わらずの高性能おもちゃ箱ポップ。ただ以前と比べると確実に深化を見せていて、特にメロディーセンスは前作は割と素直にならされていたものが、今作ではより「ひねくれ度」が増しているように感じる。難解になったというわけではなくて、あえて古風なポップス調やオペラ調にしてみたりなど、適度な遊び心があるのだ。


 前作の「Oh Mandy」のようなメランコリックな名曲は無いが、テンポ良くポップな楽曲が次から次へと出てくる感じは、とても心地よい。もっと評価されてもいいような(全く持って地味じゃないですか?)。The Shinsあたりにも通じるインディー精神が漲ったいいアルバムです。


 おすすめ度★★★★(24/10/08)


Summer Grof