何かとあったKeaneであるが(かくいう僕も2006年サマソニでドタキャンの憂き目にあった一人)、ついに新作を発表。いろいろなトラブルを乗り越え、また自分たちの音を鳴らそうと戻ってきたことは素直に喜びたい。
さてその内容だが、前作「Under The Iron Sea」では、内省的でダークな方へとシフトしていったが、新作ではさらに大胆な方向へとシフトしている。
1曲目「Spiralling 」を初めて聴くKeaneファンはびっくりするだろう。シンセ音からメロディー、安っぽいコーラスまで見事に80'ポップ。2曲目「Lovers Are Losing 」は彼ららしい泣きのメロディーが冴えているが、味付けはやはりシンセ中心。つまりは鋭角的な表現ではなく、より柔らかいイメージを伝えようとしているのかなと思う。その後も、基本線は80'に隆盛したシンセロック的な曲が並ぶ。音は厚めであるが、83年くらいに発売されていても、全く違和感がないと思う。
1stの音が忘れられない人にとっては、期待はずれだろうし、2ndの暗さがいいっていう人には、ゴミにしか思えないかもしれない。ただ、前作ではどこか苦しく、ストイックになりすぎている感もあったのだが、今作では彼らのメロディーは実に伸びやかに鳴り響いている。そこが、今作の聴き所ではないかと思う。アンセミックなものも結構あるし、ライブでもこれらの曲を合唱するシーンが見られると思う。
個人的には、エレピとシンプルなドラムでトムがたおやかに歌う「You Don't See Me」のような曲が好きだが、これももろ80'。自分は80'に小中学生時代を過ごしているので、こういう音を聴くとすごく「はるかノスタルジア」って気分になるんです。というわけで、僕はこのアルバム結構好きですし、同じ年代の人には(免疫を持っている人には)おすすめできます。
おすすめ度★★★☆(22/10/08)
Spiralling(PVも80')
The Lovers Are Losing