Mercury Revの新作。極上のサイケデリアを奏でるバンドであるが、このアルバムではその「安住の地」を捨て、新たな冒険を試みている。
無限のサイケデリアを表現するために、幻想的なギターや止めどなく甘いストリングスなど、かならずアルバムごとに核になる表現形態がこのバンドにはあるが、今作ではずばり「エレクトロ」によるアプローチを試みている。このやり方が今回すごくはまっている。
その効果は、ビートの効いた曲が多くなったことに現れている。これまでの作品の中で一番リズムに耳がいくアルバムかもしれない。特に7曲目「DREAM OF A YOUNG GIRL AS A FLOWER 」の重厚なブレイクビーツは新鮮。それでも、彼らの世界観に違和感なくとけ込んでいる。このアルバムのハイライトでもあるだろう。
また、3曲目「Sense On Fire」、6曲目「Runnaway Raindrop」で見られる、驚くほどエモーショナルなサウンドもまた、彼らが新しい武器を手に入れたからこそ実現できたと思う。新たなバンドの魅力を開拓した素晴らしいアルバムだと思う。ただ、以前の彼らの作品に比べると前作からやや没個性化に動いているのが気になるが、現実と非現実の境を行くような眩いサウンド、儚さと憂いを湛えたメロディーがそこには確かにある。
今、そういうバンドが他にいるのかと言えば、Sigur Rosくらいしか思いつかない。ため息が出るほど美しい。
おすすめ度★★★★(21/10/08)
DREAM OF A YOUNG GIRL AS A FLOWER