Mogwai,6枚目のアルバム。これぞポストロックという佇まいから少しずつ音楽性の幅を広げてきた彼ら。ここ最近を見ると、以前のイメージから変わろうとあれこれ試行錯誤しているところがあり、そこが作品の出来を左右していた。ゆえに「もう少しシンプルに考えると素晴らしくなるのになぁ」という思いを抱いていた。
それはよくある、表現者と聴き手の欲求のズレの部分なのだろう。例えばTravisがラウドになってしまうことへの寂しさと似ていて、昔からのファンはどうしてもこれまでのイメージを求めてしまう。それでもMogwaiはまだ上手く折り合いをつけていたほうだと思う。変化し続けながらも、本来の魅力はそのまま維持し続けてきた。それは「夢と現実の狭間をたゆたうようなメロディーライン」だ。
そして、今作でもそのメロディーラインは健在だ。そしてうれしいことに、空気の波間を漂う中を、突然ノイズギターが切り裂くという必殺の展開がここでは見られる。これまで、彼らはその「伝家の宝刀」をあえて封印していたという。その刀を再び握ったことは素直に喜びたいし、そのおかげで以前の彼らの音楽にあった身震いするようなカタルシスがまた感じられるようになったことがうれしい。
聞けば、今回のプロデューサー、スタジオはあの傑作「Young Team」と同じらしい。原点回帰、というほどではないが、過去の自分たちに対して何か吹っ切れた感が今作から感じられるのはそのせいだろうか。
そして、驚きだったのが久しぶりに「Young Team」を聴いてみて、その「鮮度」が全く落ちていないというところだ。続けて「The Hawk~」をかけても全然違和感がない。ぶれないものを持った人たちは強い、全く。
おすすめ度★★★★(10/07/08)
Batcat(アニメーションのヴァージョンを。こっちの方が好きなので)