Brian Wilson、4年ぶりのニューアルバム。その間に「SMiLE」を完成させ、実質は精力的に活動を行っていたわけだが、こうやってオリジナル曲中心のアルバムはずいぶん久しぶりな感がある。
もうすっかり御大として扱われているところもあるだろうが、そんなよけいな気遣いを吹き飛ばしてしまうくらい今作は素晴らしい出来である。若い人にはアメリカン・ポップスの伝統を踏襲した、保守的な作品に思われるかもしれない。しかし、音符が五線譜の上を飛び跳ねているというか、とにかく音楽の本来持っている楽しさや美しさみたいなものが凝縮されている。それを一度は廃人になりかけた人間が60をとうに超えてから生み出したものなのだ。
制作においては、バンドのメンバーであるスコット・ベネットと多くの曲を共作している。また今回はあのヴァン・ダイク・パークスが自ら書き下ろした語りで参加。スマイルやサーフズ・アップの頃のスピリチュアルなメッセージを届けている。
今回、ロッキン・オンのインタビューで今作に収められている「永遠のサーファー・ガール」は、ロネッツの「Be My Baby」へのオマージュだということが明かされた。実際問題、BrianはほかにもBe My Babyを意識した曲を作っている。有名なところでは、「Don't Worry Baby」だろう。66歳になっても未だに「Be My Baby」を超えようとしていること、オマージュと言うよりは執念のようなものさえ感じる。個人的には、フィル・スペクターをもうすでに超えていると思うのだが。しかしながら、その気持ちこそが長年にわたってBrianのモチベーションとなっていることは間違いないだろう。そういう意味では、音楽の神様にはBrianの耳元で「いい線行ってるけどね・・・」とつぶやき続けてもらいたい。
おすすめ度★★★★(10/05/08)
That Lucky Old Sun Trailer