夏の終わりを感じるのは人それぞれに違いがあるだろうが、僕は「ロックフェスが終わる」と同時に、夏の終わりを感じる。サマソニが終わって、帰りの飛行機の中で窓から景色を眺めながらそう思うのだ(実際はライジングサンがその後にあるのだが)。
ロックフェスというのは、自分のような田舎ものにとっては「奇跡」に近い。途方もないというか、北海道にはまず来ることのないアーティストをたくさん間近に見られるなんてのは、最近でこそ受け入れられるようになったものの、かつてはあり得ないことだった。
ロックフェスの味を知ってしまった今、自分にとっては「あり得ないもの」から「なくてはならないもの」へとなった。人生を一瞬彩ってくれる「祭り」、一言で言うならそういうことになる。
もう結構話題になっている、Black Kidsの1st。すっかり売れっ子になったバーナード・バトラーがプロデュース。
基本はわかりやすいメロディーにシンセが絡むダンサブルなギターポップ。当然こういうタイプのバンドの生命線はメロディーの質であるが、彼らの場合ここは見事にクリアしている。実にハイクオリティなメロディーが並んでいる。いわゆるパーティー・チューンの連発であるが、聴いていてすごく楽しくなるわけではない。むしろちょっとした寂寥感さえ覚えてしまう。なぜならば、Black Kidsの楽曲群が夏フェスを楽しむ自分の心情とリンクしているような気がしてならないからだ。
彼らの歌からは、人生のささやかな「祭り」を全力で楽しもうとする気概、そして終末へと向かうことに対する切実な思いが伝わってくる。彼ら自身も今自分たちに訪れている「祭り」を全力で楽しんでいる。そしてもちろん、必ず終わりがくることも知っている。それでも、つかの間の夢に身を任せてみよう。特に娯楽のないところに育った人間にとっては、すごく共感できる思想なのだ。
彼ら自身にそういう体験があるのかどうかは知らない。が、それは自分にとってはどうでもいいことで、また来るべき新たな「祭り」に向けて、Black kidsを聴きながら思いを馳せていくことになるんだろうな。いや、それでいいと思う。
おすすめ度★★★★☆(09/19/08)
I'm Not Gonna Teach Your Boyfriend
Hurricane Jane