Beautiful Future/Primal Scream | Surf’s-Up

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音楽の話を中心に。時にノスタルジックに


 プライマル、通算9作目のアルバム。前作は迷いのないストレートなルーツへの回帰を果たし、個人的にはそのシフトチェンジが大いに成功したと思う。「Give out~」の失敗から、もうこの路線はないんじゃないかと思っていたが、その想定外なところがなんとも彼ららしくて、古いフォーマットのロックが実に新鮮に響いた。常に挑戦的な姿勢こそがロック、まさにそんな道のど真ん中を走り続けてきた彼ら。「前作の延長線上にあるような作品は決して作らない」という心意気が未だ健在なのは素晴らしい。


今作は多くのプロデューサーを迎え、適所適材な「何でもあり」路線でアルバムを構成している。1曲目Beautiful futureの直球ギタポにはあっけにとられたが、彼らにとっては全然「あり」なこと。

 ギンギンのアッパーチューン、Can't Go Backや前作よりもさらにアーシーなZombie Manなど今作は今までの中で一番バラエティーに富んだ内容だと思う。でも何というか、曲自体は決して悪くないのに、心を素通りして残らない。はっきりした方向性を出さずに、ある程度シーンを意識した構成というのは、実はプライマルにしては「安全策」のような気がしてならないのだ。誤解を招いてしまうかもしれないが、プライマルのロックから僕は何度も「贋作」が「本物」を凌駕する瞬間を見てきた。それこそがロックの持つ魔法だと思っている。そしてその魔法を使うには、自分たちのロックに対する「絶対的な確信」が必要だと思うのだ。今作はその「確信」の部分がやや弱く見える。シーンに決して迎合しないでリミッターを振り切ってしまうようなロックをもう一度見せてほしいなと思う。

おすすめ度★★★☆(08/22/08)

Can't Go Back