Death Cab For Cutieの新作。前作「Plans」は彼らの作品の中で初めて「素晴らしい」と思ったアルバムで、全米1位にもなった。たおやかで美しいメロディーライン、シンプルなギターサウンドは新鮮さはないものの、エヴァーグリーンな輝きを持っていて、ギターロックの持つ普遍的な魅力をダイレクトに伝えてくれた作品だった。
で、今作であるが、これまた「ギターロック見本市」とでもいうような、「自分たちにできる範囲のことを目一杯やっている」感に満ちた作品となった。
「Bixby Canyon Bridge」はオープニングを飾る曲。このギターのラウドな感じが、以前の彼らを彷彿とさせるのだけど、続く「I Will Possess Your Heart」から、がらりと印象が変わる。この曲はネットでいち早く公開されていた曲。8分以上ある大曲で、独特の浮遊感が心地よい。
「You Can Do Better Than Me」はブライアン・ウィルソン直系の60年代風ポップ。「Your New Twin Sized Bed」はやや古典的なアメリカンロックにも聞こえる。
これまでの説明からもわかるように、統一したキーワードは「ギターロック」という言葉しかないくらいに、内容が多岐にわたっている。この統一感のなさがどうとられるかで、印象が変わると思うが、僕はかなり好きである。というのは、1曲1曲がすごく練られていて、完成度が高いからだ。あれこれ試していても、無駄な要素がほとんどみられない。実に必然的な展開を見せる曲ばかりなのだ。
個人的にはシンプルなポップ「No Sunlight」「Long Division」、デスキャブ流ラーガ・ロック「Pity And Fear」が好き。「ギターロック」と聞くだけで素通りできない人には間違いなくお勧めできるアルチザン・アルバム。
おすすめ度★★★★☆(08/5/25)
I Will Possess Your Heart