You Cross My Path/The Charlatans | Surf’s-Up

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 「無料ダウンロード」という形でリリースされた、シャーラタンズの新作。今更説明のいらない、潮流の激しいUKロック界のサバイバーである彼ら。


 大傑作「Tellin' Stories」以降は、新しい自分たちのグルーヴを追求しようと格闘を続けてきたが、もう一つ成功したとは言い難かった。前作「Simpatico」では、以前のような攻撃的なナンバーと、ダンサブルなナンバーが混在していたが、トータルで見ると若干散漫な印象はぬぐえず、昔からのファンとしては決して満足のできるものではなかった。一般的にもいわゆるピークを過ぎたバンドとして観られていたと思う。

 「無料で音源を配布して、ライブでの集客を増やす」という狙いがそうさせたのか、まさにライブ映えする、躍動感溢れる楽曲が並んでいる。そして、彼らのサウンドの特徴であるオルガンは実にしなやかにのびのびと奏でられている。まさに、楽曲の中心となって牽引している感さえある。

 また、「Tellin' Stories」時のサウンドからのぞかせるスリリングさが、見事に復活しているのも喜ばしい。聴いていてぞくぞくするようなグルーヴ感がここまで伝わってきたのは、本当に久しぶりのことだ。


 全10曲。非常にタイトにまとめられたアルバムである。正直、彼らがここまで素晴らしい作品を作り出すとは思っていなかった。いわゆるクラシカルなUKロックの良質な部分だけではなく、昨今のトレンド的な要素もうまく取り入れている。「The Misbegotten」「Missing Beats (Of A Generation)」はニューレイヴあたりの要素が結構強い。クラクソンズ好きな人なんかも気に入るのではないだろうか。それでも、これまでの「格闘」しているような重苦しさは感じられない。むしろ、素直に自分たちのできるものを形にしたという印象の方が強い。

 個人的には9曲目の「Bird/Reprise」が好き。メランコリックな鍵盤と重厚感のあるビートが絡み合う、しなやかなナンバーだ。そしてラストの「This Is The End」はタイトルと裏腹に、彼らが新しい扉を開いたような解放感に満ちあふれた力強いナンバー。アルバムがこういう終わり方をしているところも、実に心憎いと思う。ベテランの百戦錬磨的手腕が如何なく発揮されています。最初は「集客めあて」というところがビジネスライクで嫌だとも思ったのだが、これはライブに行きたくなるよ。


おすすめ度★★★★☆(08/3/17)


You Cross My Path