すごい人だったんだ | Surf’s-Up

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音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

ちょっと前の話になるんですが、テレビで「クリスマスの約束」という特番がありました。小田和正が毎年この時期にやっているイベント番組で、小田和正の朴訥とした語りと普段見られないアーティストとの共演を中心に番組が構成されているのだけど、思わず見入ってしまいました。

 自分が6年生の頃、担任の先生がオフコースが好きで、その影響でクラスのほとんどの子が聴いていた覚えがあります。そんな中、自分は「ワムだ!デュラン・デュランだぁ!」とバカみたいに騒いでたんですが、一応有名な曲は一通り知っていました。だって、休み時間になったらクラスにオフコース流れてるんだもの。でも、個人的には特に興味を持つこともなかったのです。

 何で見ていたのかというと、くるりや佐野元春が出ると聞いたので。なので、彼らが出てくるまでと、なんとなーく見ていたのですが、すっかり引き込まれてしまいました。

 何がすごいと思ったのかというと、小田和正のアーティストとしてのエゴが半端ではないんですね。ゲストを呼びながら、一緒に曲を作ったり、代表曲を演奏したりするんだけど、小田和正はほとんど歌わないんです。自分の曲も、全部ゲストに歌わせたりする。

 しかし、こういう形式では、ゲストのことをすごく持ち上げたり、親しげに接していくのに対して小田和正は時々握手くらいはするものの、ほとんど親愛の情を見せない。目もほとんど合わせないし、相手に気を遣うことなく、自分の思ったことをどんどん言う。

 そしてパフォーマンスでも、バックでハモるだけで、見事に彼の曲そのものに代わってしまうのである。くるりの「ジュビリー」だって、彼がちょっとハモると完全に彼の曲になってしまう。完全にゲストを食ってしまっているのである。

 彼自身が自覚しているのかどうかはわからないけど、小田和正はやっぱり表現者としてのエゴが非常に強いアーティストであると思う。アーティストにエゴがあるのは当たり前なんだけど、最近ここまでの表現へのこだわりやパワーを持っている人はほとんど見かけない。絶対的に自分に自信があり、少しも揺らぐことがないのだろう。そういう境地に達する人は本当に少ないと思う。

 そして、自分の曲を歌うときの凛としたパワー。もう還暦を迎えたそうだが、バキバキのテンションのパフォーマンスを見せていた。自分が聴くタイプの音楽ではないけど、未だにアルバムが1位を獲得するくらい人気があるのかが分かった。