Unplugged In New York/Nirvana | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに



いわゆる「リアルタイム」ということで考えれば、若い人に自慢できるのはStone RosesやNirvanaということになろうか。Nirvanaは大学生の頃。カートの死は、ゼミの先輩に教えてもらった。かつて「何かおすすめのものないか?」と聞かれて紹介したのがNirvanaであった。結果的にはその先輩の方がNirvanaにのめり込んでいったが。


「Unplugged In New York」はNirvanaのアルバムの中で一番よく聴いた。本当によく聴いた。カートが亡くなってから、こればかり聴いていた時期もあった。そのせいか、「『Nevermind』と『In Utero』どっちが好きか」というと、「In Utero」の方が好きだったりする。なぜかというと、この「unplugged」での「In Utero」群の演奏があまりに素晴らしいからだ。


 で、実に14年越しに映像が製品化されたのが、このDVDである。個人的にも、このような形で通して見るのは初めてである。率直に言うと、このように動くカート、囁くカートを見ると本当にどきどきする。


 今にして思うと、まるで葬儀を飾るような白百合と蝋燭の中で、ライヴは行われる。しかしながら、ここでのカートの歌声やバックの演奏は、不思議なほど人間の感情的な「力」に満ちている。一見枯れているように見えるかもしれないが、ここでカートが浮かべる柔和な表情は実に自然で、人間が人前で見せるにはあまりにも無防備な感じがする。家族や恋人に見せるような顔なのだ。でも、そんな笑顔一つに、そして時々さまようようなカートの視線に、僕はぎりぎりにそぎ落とされた状態で湧出してくる人間の「心」を感じる。それはきっときれいなものではないんだろう。そいつを唾棄してやる、なんて思うが結果的には「がんじがらめ」になったりして。


 音楽的な面を言うと、独特のリフレインを多用したメロディーとこのシンプルな演奏は実に相性が良い。カートの書く楽曲にはさびをリフレインするものが多いが、これが一種の中毒性を生んでいるように思う。すごい「手癖」だと思う。チェロやアコーディオンなども含め、エレクトリックではなくても、音楽として十分にインパクトがあり、そして掛け値なしに美しい。


 また、このDVDにはリハーサルの様子も収録されているが、一見無造作にやっているようで実に作り込まれていることがわかる。そして、観客とのやりとりではリクエストを取ったり、そのリクエストに対してカートが演奏にふさわしいかどうかを説明するのも、カート考え方を探れるという点でとても興味深い。


http://jp.youtube.com/watch?v=2oAF3UdSJ1k