わたくしの元職場は
かなりの従業員がいる
同じフロアーでも
顔を知っていて
挨拶も交わすが
名前までは知らない人だらけが
普通
余程社交的でなければ
部署内だけで
精一杯な感じ
けれど
従業員食堂や休憩室など
他部署の人達と
顔を合わせる場所も
沢山有る
そして
数年勤めれば
名前は知らないが
気持ちの良い挨拶を
交わす人達も出来てくる
そんな感じで
或る女性と
挨拶を交わすようになった
彼女は
殆ど白い髪を
きちんと綺麗にアップに
していて
その
ヘアスタイルが印象的だった
凛とした感じで
いつも早足で歩いていた
同じフロアーらしいが
何処の人かは分からなかった
廊下やエレベーター
食堂や休憩室でと
何気によく出会うので
或る日
「お疲れ様です」
と声を掛けた
「お疲れ様です」
二コリともせずに
クールな挨拶が返って来た
彼女とは
朝もよく会い
「おはようございます」
という挨拶も
交わすようになった
数か月過ぎた頃には
「暑いですね」
「本当に」
と笑顔で一言二言
会話をするようになった
殆ど白髪の髪を
綺麗にアップしているその人は
綺麗な顔立ちだった
そして
白髪の量程
年齢を
重ねていなかった
そう
アラカンおばちゃんより
結構若い人だった
或る日彼女は
髪をアップにしないで
通勤してきた
肩までの髪を
サイドだけ束ねた
ヘアスタイルのその人は
ぶっちゃけ
可愛かった
その日は
すれ違う事も無く
遠くから見かけただけなので
『可愛いですね』
と声を掛ける事は
出来なかった
次の日から
彼女の髪は
いつもの
アップに戻っていた
そして
わたくしの
最終出勤日の
退社間際
彼女に出会った
「お疲れ様です
実は
わたくし退職するんです
今日が最終日なんです
会えて良かった」
と伝えたら
「ええ!そうなんですか~」
彼女は驚き
退職の理由を簡単に話すと
「どうぞお元気で頑張って下さい」
と
ハグされた
『ああ こういう人なんだ』
クールに見えるが
案外違うのかも
ちょっと
キュンとした
毎日が日曜日の
わたくしは
このお題で
ふと…
彼女を思い出したのでした
今日も
アップヘアで
凛としているかな