下北沢に来るといつも思い出す…
そう、あれは高2の冬の話。
あの日もこんな、寒い夜でした。
当時世間は、武田真治やいしだ壱成といった、中性的な魅力の男性がブーム。
影響されやすい僕は、いしだ壱成の髪型を真似し、そして右耳にピアスを開けていました。
もちろん、右耳のピアスはゲイであることを表わす事も知った上で、また、自分はゲイではないのに、あえてそうしていたのです。
それはもう、なんでも来いと言った、若さなのでした。
そして下北。
とある古着屋で、僕は棚にある服を見ていました。
すると隣に、やたらと長身の、三日月のような横顔をしたお兄さんが現れ、おもむろに、僕の目の前の棚から服を取ろうと手を伸ばしました。
その時、彼の手の甲が、僕の体のとても大切な部分に「ちょん」と触れたのです。
ん?
と一瞬思ったものの、特に気に留めずにいました。
次に隣の彼は、手に取った服を棚に戻そうとします。
するとまた、手の甲で、僕のとてもデリケートな部分に触れたのです。
「ちょん」
そこで気付きます。
これはおかしい。
わざと触っている、と。
とりあえず店内の別な場所に移動すると…
その三日月は、ぴったり後を付いてくるじゃぁないですか。
サッカーで言う、マンマークというやつです。
僕は怖くなり、店を出て、帰ろうと駅に向かいました。
しかし悲しいかな。
ここは入り組んだ街、下北沢。
おまけに普段あまり来ないこともあり、道を間違えてしまったのです。
しまった、間違えた。
と心で叫び、くるっとUターンすると…
目の前にその長身の三日月がいたのです。
その時の恐怖。
ひょっ!
と軽く声が出ました。
そしてなんと、彼は話し掛けてきました。
君、いくつ?高校生?
答えるはずもなく僕は、クリスチアーノ・ロナウドばりのステップで彼の横を通り抜けると、走って駅へと向かいました。
そして…
ついに駅が見え…
一安心。
と思いきや、駅階段前で、キョロキョロと誰かを探すようにして、その三日月がいるじゃないですか。
その長身をフルに活かし、首を伸ばす姿は、まるでキリン。
とっさに靴屋に逃げ込み、時間を潰すこと30分。
ようやく観念した三日月キリンは、サバンナへと帰って行きました。
それ以来、下北沢に行ったのは、わずかに2回だけ。
なんとか無事だったものの、傷物にされてしまった僕は
今もこうしてお婿にも行けず、独り、暮らしているのです。
おしまい(・∀・)




