三島由紀夫は、自衛隊の市ヶ谷駐屯地で自決した3年前の1968年に「命売ります」という本を出版した。
この本は、週刊プレイボーイで連載された作品で、大衆作品として仕立て上げられている。
スリリングな展開で、一気に読み通せる内容だった。
後年自害する三島だからこそ、生死について語られるその一文一文が生々しさを帯びている。
彼は羽二男に、政治経済を含めすべて無意味から始めることが良いのだと言わせている。
順序が大切で、意味が先に立ち挫折などを経て無意味にたどり着いたとしても、それはただのセンチメンタリストだと。
実際、羽二男は生きることに無意味を見出し命を売る生活を続けた。ある日急に命が惜しくなるのは、意味が先に立ってしまったからである。
三島は、間違いなく突然やってくる"無意味"を経験している。それが急にやってくるものだということは経験せねば分かるまいと思う。
さらに、自らの信条に対するあの確固たる思いは、無意味から生まれたからこその強さがあったのではないだろうか。
ただし、全て無意味から始めるということは普通に生活をしていてできることではない。
しかし全ての行為を"自覚"して行うように気を向けること。それを心がければ良いのではないかと思う。
ゴキブリの生活に陥らないように、世界を見据える目を鍛える必要がある。
◾︎あらすじ
社会的に成功したコピーライターの羽二男は、ある日突然"新聞に書かれた文字がゴキブリに見え"ふいに自殺を試みた。
しかし、幸いな(不幸な)ことに一命を取りとめるも、それまでの生き方ができず、会社を辞めて自分の命を新聞広告を通じ売りに出す。
羽二男は、命への執着がなくなったが、様々な危険な依頼をこなしていくうちに、死にたくないと思うようになる。