上院議員が支持を表明(タイ) | 「アジアの放浪者」のブログ

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5月14日の総選挙で、38.5%の得票率によって第1党となったものの。

「前進党」のピター党首が総理大臣に就任できるかどうか、安心できない情勢です。

 

それは憲法の規定により、タイでは上院議員も総理大臣を選ぶ投票権を持つからです。そして、現在の上院議員(250人)は軍政が選んだ人たち。前進党は、軍政とのつながりが薄い5党と連立を組むことで、定数500である下院のうち310票を確保していますが、上下両院総会で必要な過半数(376人以上)の票を得るためには、まだ66票足りません。そのため前進党は、支援をいただけそうな上院議員と接触し、票の確保に真剣です。

※上院議員は個別の政党に所属できない規定となっています。一方下院議員は、必ずどこかの政党に所属していなければなりません。日本のような「無所属」はあり得ないのです。

 

上院議員たちが前進党に対して懸念していることは、同党が刑法第112条にある「不敬罪」の改正を政策に掲げているから。

これは、高齢者を中心に王室への尊敬の念が深く残っているタイ王国(Kingdom of Thailand=タイの正式国名)を2分する原因になる可能性があります。

 

そのため前進党は、連立を組む政党との政策協定に「不敬罪」改正を含めませんでした。タクシン派で今回の総選挙で第2党となった「貢献党」ですら、前進党が主張している「不敬罪改正」「王室改革」には消極姿勢ですから、この政策が実現するのはまだ先になるかも知れません。

 

今回、連立政権に参画していない「民主党(議席数25)」も、前進党が王室護持を保証するなら、総理大臣指名選挙でピター党首に投票する用意がある、と表明しています。どうやら前進党が政権を樹立するのは、「王室にどう向き合うのか」に寄りそうです。

 

そうした中、一人の上院議員が自身のFacebookで、前進党のピター党首を支持すると発表しました。

 

 

「私は国民の選択を尊重します。ピター・リムジャルーンラット氏を総理大臣として支持することを宣言します」。

そしてこの投稿は、あっというまに12,000を超える「超いいね」「いいね」を獲得しています。これは、他の上院議員に対する国民からの圧力になりましょう。

 

前進党は、王室廃止とまでは訴えていません。

ただ「不敬罪」の適用が恣意的で、過去には反政府運動をしているだけなのに「不敬罪」が適用されたと疑われるケースがあります。また、王室批判の投稿を転載しただけで「不敬罪」となった人もいます。そのため「不敬罪」の適用基準をもっと明確にしたいというのが、前進党の主張です。

 

どうする、前進党?

政権奪取は目の前にありながら、青年層の支持を集めた基本政策をどうするかで頭を抱えています。まぁ、今回の総選挙の争点は「軍政の流れを組む政権の是非」であり、「王室改革」ではなかったことも事実ですから、ここは前進党、妥協するしかないように思います。