犯罪も、国際化が進んでいるようで…。
2月4日深夜、タイの有名なリゾート地プーケットで、高級ヴィラに滞在していたガイコク人が何者かによって射殺されました。
ヴィラに設置されていた防犯カメラが、射殺の瞬間を記録しています。犯人は2人で、発射された弾丸は、なんと19発。そのほとんどがガイコク人に命中していて、ガイコク人が崩れ倒れたあとも、犯人は執拗に射撃を続けたようです。
被害者は、自分で運転してきた赤色のMG車をヴィラの駐車場に停め、降りたところを狙われています。
タイ警察は当初、所持していたパスポートに基づき、被害者を「インド・チェンナイ生まれのインド系カナダ人、マンディープ・シン氏(31)」と発表しました。が、車内でカナダ政府発行の運転免許証もみつかったのですが、そこに記載されていた名前は「アマリット・シン・シンドゥ(33)」。
19発も発射された犯行状況と、旅券と運転免許証の名前と生年月日が異なることから、警察はカナダ大使館の協力を求め、一方で移民局の入国者データについても調べを進めたところ…。被害者は、現在はインド国籍のジミ・サンドゥ氏(32)であることが判明しました。記録によれば、1月27日にタイに入国し、プーケットのリゾート・ヴィラに滞在していたそうです。
このサンドゥ氏。
7歳の時にカナダのバンクーバー近郊に移住し、地元のギャング組織、「The United Nations」に加入していた過去がありました。The United Nations と名付けられたのは、インド、イラン、東欧など異なる出身国の人間がメンバーとして参加していたから。そしてこの組織は、同じくバンクーバーを拠点とするギャング組織 The Brothers Keepers(こちらはカナダ生まれ中心)と縄張り争いに明け暮れているそうです。
そして彼は、2010年と2012年に起きた重大事件(詳細不明)に関わったとして有罪となり、服役中の2016年、カナダ国籍を取り消されインドに強制送還されています。しかしそれでも懲りなかったようで、2018年6月に、インドで大規模なケタミン製造をしていた罪で逮捕。保釈中に逃亡し、以後逃亡生活をしていました。
2015年、国籍取り消しに向けた審査の中で、シンドゥ懲役囚(当時)が移民局担当者に語ったとされる言葉が報道されています。
「改心する。もう1度だけでいい、私に機会を与えて欲しい。ギャングに関わっていたら、この先の人生は見えているから。それは、刑務所の中で一生を過ごすか、ライバルに殺されて生涯を終えるかだ」。彼は、わかっていたんですね。
でも結局、人生を生き直すことができななかったようで。
海外逃亡中に偽の旅券を使って高級ヴィラに滞在するなんて、ふつうの市民にはできないことです。事実、彼の死を受けて、ライバル組織の The Brothers Keepers が彼の死をあざ笑うコメントを、SNSで発信しているのだとか。きっと、インドに帰国した後も、ギャングとのつながりは断てなかったのでしょう。
1人を殺すのに19発も撃った2人の犯人は、今も逃走中。警察が追ってはいますが、どうやらかなりなプロのようで、身元を示す痕跡を残していないそうです。
犯人は、シンドゥ氏が戻るまで、この低い塀のところで待機していたことが推測されています。
カナダ・マフィアとつながっていたインド人が、滞在先のタイで何者かによって射殺される…。
こうなることは彼自身予測していたし、更生する機会だって、きっとあったことでしょうけれど。
結局、自ら選んだ人生です。ですが…。
7歳でカナダに渡った時には、どんな気持ちだったのでしょうか。またどんな環境下で、マフィアとつながったのでしょうか。
なにか、もうひと押しのきっかけがあったとしたら、シンドゥ氏も別の人生を歩んでいたのかも知れません。
ちょっとしたきっかけで、運命が変わっていく…。変わるのならば、いい方向に変われればよかったのですが。