「表現の不自由展・その後」、8日午後再開 | 「アジアの放浪者」のブログ

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大きな反響を呼んだ「表現の不自由展・その後」。

すったもんだの挙句、結局、明日(10月8日)午後に展示がもと通りに再開するようです。

 

私は展示を直接見ていませんから断定的なことは言えませんが、例えば、昭和天皇の写真が焼かれている映像。これはあまりにも酷いと感じています。YouTube にアップされている動画を貼り付けます(気分を害される方がいたら、ごめんなさい)。

 

 

うーん、これが芸術だと…。私には、作者の政治的主張が詰まっているとしか見えません。タイで王族の肖像を焼くような映像を流したら…。不敬罪で即逮捕でしょうね。

 

それに、もうひとつ大きな批判を集めている「平和の少女像」。

 

 

製作者のキム・ウンソンさんとキム・ソギョンご夫妻は、この像は「反日を象徴するのではなく、平和の象徴として製作した」と訴えています。このご夫妻は、ベトナム戦争中に韓国軍によって犠牲となった民間人の鎮魂を込めて、子を抱いたベトナム人母の像「最後の子守唄」も制作しています。

 

 

なるほど、像を製作されたご夫妻は、心底平和を願ってこの少女像を製作したのかも知れません。

しかし現実問題として、このような少女像はすでに「従軍慰安婦」としてのイメージが定着しており、かつその従軍慰安婦の問題が、歴史的に事実だった否かの議論が為されているのはご存知の通りです。

 

こうした状況では、もはやこの像は政治的意味合いが強すぎる…。芸術家であれば、既存の政治論争を超えて平和を訴えられる像の製作を目指すべきだったのではないでしょうか。

 

「芸術」と称したなら、どんな表現でも許される…。

そういうことはないでしょう。ましてやこの展示会がある「あいちトリエンナーレ」には、文化庁から7,800万円の助成金が交付されるところでした(文化庁は交付を取りやめることを決定しています。これには愛知県側が反発し、今後裁判になることが予想されます)。これがこの展示会批判に拍車をかけています。仮に初めから税金が投入されることはなく、全額民間の寄付だけで賄うということであったなら、「苦々しい展示があるが、展示自体を止めさせることは難しい」という意見が主流になったのではないでしょうか。

 

また、文化庁が交付申請書を受理したがゆえに、その助成金交付を取りやめたことで「憲法で保証された表現の自由を侵害している」との批判があります。政府が展示中止を命令したのであれば、まさしくその指摘通りでしょう。ですがこの展示が一旦中止になったのは、大きな批判を浴び、脅迫まがいのことも出てきて、警備上課題が生じたからであって、政府の圧力によるものではありません。愛知県の大村知事は、「助成金の交付の取りやめ=政府による検閲行為=表現の自由の侵害」と主張しているようですが、主催者が展示の中止を決めた後に交付の取りやめを決めていますから、ここの判断もちょっと難しいところ。

 

しかし、この「表現の不自由展・その後」は、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」内の106ある企画展のうちのひとつ。予算規模は400万円ほどで、全体予算12億円の0.3%ほどです。この106中1つの企画展のために、助成金全額が交付されなくなる、というのもいささか厳しい話です。でも、「表現の不自由展・その後」の部分だけ助成金を交付しません、となったら、まさにそれは検閲行為になりましょう。

 

展示の内容が果たして芸術なのか。これには大きな疑問符が付きますが、一旦決定した助成金交付を取りやめというのも、あまりスマートでセクシーな判断ではありません。でも、この展示を快く思っていない国民が少なからずいるわけで、その人たちの意見(中には過激な意見、暴力的な意見もありましょう)を蔑視・軽視することは、まさに「表現の自由」を尊重していないことになるのではないでしょうか。

 

正直、論争の巻き添えとなってしまった他の展示作品がお気の毒です。