明らかに生贄だよね、仲間のチクリ。
Semrau大尉によるタリバンの「殺人事件」は、首をひねることばかりである。
瀕死のタリバンを銃殺した行為を「武士の情け」ではなく第二級殺人と
起訴している根拠は何なのか?夫によれば「カナダ軍法規に違反しているから」
ということだが、おいおい、事件は戦場アフガニスタンで起こり、相手は
顔一つ変えず少女の顔に薬品を浴びせ焼くようなテロリストだ。
ジュネーブ諸条約により保護されているのは、正規の軍隊に属する兵士であり、
タリバンのようなテロ軍団は関係ない。今回もそうだが軍事裁判は一般に
詳細を伝えないので、一体事実は何なのかわからない。戦場での殺人を全て
裁判にかけるなら、復員兵はほぼ皆同罪になってしまう。
Coup de graceはこれまでも数々の戦場で起こり、このような形でとりあげられ
ることはまれである。近くに医療設備のない戦場で助かる見込みのない重傷
の敵兵を前に、どう対処するか。ひとおもいに楽にしてやるか、放置して
何時間も苦しみながら死ぬのを待つか。どちらが人道的なのか。
私が負傷兵であれば、銃弾を希うだろう。
Stanley KubrickのFull Metal Jacketの後半で、Jokerのあだ名を持つ兵卒は
ベトナムの戦場へ送られる。次々と仲間を銃殺した狙撃兵を捕らえてみれば、
なんとおさげ髪のベトナム少女であった。瀕死の彼女は血まみれの口から
「撃ち殺して」と英語で懇願する。それまで兵士としての自覚など全くなか
ったJokerだが、躊躇ののちに一発の銃弾で少女の息の根を止めるのだった。
ま、「あれは映画だから」と言ってしまえばそれまでだ。
しかし実際に大尉の行為は、私情から起きた殺人でないことは、誰の目にも
明らかである。上官としての彼にとり、自分の部下達を安全に基地へ帰還させる
ことも責任の一つであり、彼らの身を守るために敵兵を撃ち殺すことは当然
あって問題ないことだ。さらに相手は先にも触れたように、テロリストであり
武器を捨てたように見せかけて隙を見て攻撃してくることなど、日常茶飯事だ。
そういった状況下に行われたこの「事件」が、どう裁かれるのか。