ただの歴史モノではない、という点ではポイント高いのでは。
ドイツ系のKirsten Dunstは、透き通るような白い肌と本物の金髪、ハプスブルグ家
皇女を演じるのにぴったりの容貌。14歳のマリーを演じるにはちとトウが
立ってるか、とも思うが、ホントの少女を使うわけにもいかなかっただろう、
ベッドシーンがあるから。
「お菓子を食べればいいじゃない」の発言がまことしやかに伝わっている
悪女の典型マリーだが、考えてみれば彼女が嫁に行ったのは14歳の若さ
であった。まだほんの子供だ。それも言葉も違う異国に、たった一人で。
故国オーストリアのなかば諜報員として、また二国間の同盟を固くするための
重要任務(世継ぎを生産する子産みマシーンとなること)を負い、イジワル
なフランス貴族とうまくつきあうことを要求され、窮屈な宮廷のしきたりに
従わされ…。ものすごいプレッシャー、想像を絶するストレス。
しかもだ。彼女の母親、オーストリア女帝マリア・テレジアは、この年端も
いかない娘に「あんたまだ身ごもってないの?色気が足りないんじゃない」
みたいな手紙を矢の様に送り続ける。今だったら児童虐待で逮捕である。
中学二年だよ、相手は。政治的手腕は現在でも評価の高い女帝であるが、
母親としてはあまりにもトホホだ。マリーだって別に重要任務を任せられる
ほど頭が良くしっかりしてたわけでなく、年齢的にフランス皇太子とつりあ
ったから選ばれただけで、とんだ災難だ。
パーティーとギャンブルに明け暮れた、と批判されるが、結局彼女は今の
ティーンエイジャーもやってること、つまりグレてヤケになって遊びまくった
だけ。王妃だったから金にあかせて出費が派手だっただけのことである。
財政はとうの昔、ルイ14世や15世の時代から窮乏することは目に見えて
いた。それに加えて、イギリスに対抗してのアメリカ独立戦争への肩入れが
むちゃくちゃ国庫を食い漁った。マリーへの批判は結局、「ガイジンの嫁が
無駄遣いをするのはけしからん」みたいな差別意識から始まったのだ。
だけど映画のお菓子。うう、食べたい!
でもあんなに甘いもん食べてシャンパン飲みまくって、歯をみがかなかったら
ベルサイユは歯槽膿漏患者で一杯だったのでは。