久しぶりに東京の実家に電話してみたら、母が入院したという。
夜半に急に具合が悪くなって、父が救急車を呼び、病院へ。この病院は私も
子供のころ喘息発作で何度もお世話になってるし、父も怪我で入院したことが
あり、おなじみ。ま、医者とか看護婦とかはどんどん変るので顔見知りは
もういないが。とくに上手ってわけではないが、救急指定だし総合だし、
近所にあると便利な病院である。
入院したのはちょうど先週、私たちが犬と遊んでいたころで(笑)、今は
退院して車椅子で動いているらしい。幸いにも父が老齢ながら元気なので、
日常のことは彼がひととおりやっている。私もしょっちゅう帰れる距離では
ないので、今回は父にがんばってもらうしかない。
母本人も電話に出たが、弱気なことを口走るわりにはすぐには死にそうにも
ない様子である。こういうタイプの女は、意外と長生きするのだ。いつもの
ようにたっぷりと愚痴を聞かされ(だから実家に電話するのはヤなんだよ)、
このぶんじゃ当分お迎えに来ないな、と確認して受話器を置いた。
母は、心理的ストレスが高じて本当に病気になってしまうタイプだ。
本人は仮病を使っているつもりはないし、病気そのものは本当なのだが、その
根本にあるのは「かまって欲しい」という訴えである。それはよく子供にも
出る。長い間一人っ子でちやほやされてたのに、急に下の子が生まれて両親の
関心がそっちにいってしまった場合に、上の子が病弱になってしまうことがある。
犬にも、似たようなケースが起こる。
こういう場合、患っている病気の治療だけでなく、心理的なストレスを軽減
する努力を周囲がしなければならない。愚痴を聞いてやるのも、一つの方法だ。
だけどさ。
娘の私だっていつまで若くないし、自分の家族の世話もある。一から十まで
親に頼られても、物理的にも体力的にも限界がある。里帰り時には、両親が
安心して暮らせるようあらゆる交渉ごとや書類手続きなど一切を済ませている。
それも夫の理解があってのことである。
母が私の年齢だったころは、自分の家族のことで一杯で、親の世話どころか
裕福な祖母のもとへはお小遣いをもらいに日帰りで顔を出すだけだった。
それを思い出して、もっとオトナになってよ、お母さん。