このところアジリティ犬の訃報が続くのだが、また一件。
今回の犬は、つい今月初めのUSDAAチャンピオンシップにも参加した犬だ。
準々決勝と準決勝に出たということだが、うちとはクラスが違うので一緒には
ならなかったし、走る様子は残念ながら見ていない。しかし、会場ではとても
元気で、タイムの差で決勝進出を逃したものの、準決勝でもとても良い走り
を見せたという。
アリゾナからの帰途、犬の食欲が落ちているのを飼い主は不審に思った。それ以外は、
べつに変った様子はなかった。が、虫の知らせというか、主治医のもとで血液、
尿、レントゲンなどあらゆる検査を行った。しかし、結果は全て良好。
それでも納得できなかった飼い主は、専門医のもとでさらに精密検査をした。
結果は、末期ガン。
望みなしとわかっていたが、飼い主は手術をお願いした。ガンは彼女の全身に
広がっており、内臓のみならず後ろ肢の筋肉にまでくいこんで圧迫していたという。
犬は、手当ての甲斐なく、手術の翌朝死んだ。チャンピオンシップから二週間後
のことだ。
あまりの突然の死に、私たちもびっくりだが飼い主の嘆きはいかばかりか。
あの犬にとって、あれが最後のチャンピオンシップになってしまった。
彼女は、全く病気の兆候を見せず、手術の前日にも飼い主とフリスビーで元気に
遊んだ。自分が死ぬなんて、思ってもみなかったのだろうか。
犬とはそうしたものなのだろう。
痛みがあっても、足を一本失ってしまっても、自分が不幸だと思わない。
今が楽しければ、十分幸せ。
こういうとき飼い主は、必ず「どうしてもっと早く気づいてやれなかったのか」
と自分を責める。私だってそうするだろう、気持ちはわかる。しかし、犬だけ
でなく動物は本能的に苦痛を周りに知られないようにするものだ。野生では、
弱みを見せたら敵にやられてしまうからだ。
あなたのせいじゃないよ。
彼女は、アジ犬として最高の犬性だったのではないか。
最期にチャンピオンシップの準決勝でクリーンラン、そしてそのまま走り続けて
天国のフィニッシュラインを越えてしまった。