退職は大変だった。

ポジション的にも代わりをすぐに充てられるわけでもなく、上司から説得に次ぐ説得・・。


それでも僕の意思が固い事に根負けしてくれ、僕は退職ができた。



一ヶ月後、早くも転職先に初出勤する日を迎えた。

今まで5時起きで始発の電車に乗っていた生活が、7時起きで8時過ぎに自転車で出勤するという生活に変わった。

朝から妻と子供に会って会話する、一般的には当たり前の事に僕はものすごく感激していた。


いってきます

いってらっしゃい


朝のこの掛け合いに憧れを持ち、結婚して3年でようやく叶った。


新しい会社は今までと180度違う業界で、自分にホントにできるのかと不安だったが、家族の為にも頑張ろうという前向きな気持ちだった。

3ヶ月程は研修期間で、いろいろな部署に回り現場実習だった。

この会社は社員は20数人で、あとはパート社員。

要は女の人が大半を占める会社だった。


20代から50代まで幅広くいて、30代、40代が1番多い。


どんな人がいるのかとかは正直どうでもよかった。

そんな事よりも、未知の業界での仕事を早く覚えなくてはと必死の毎日だった。




必死のはずだった。



そして入社して1ヶ月過ぎた頃、




僕は彼女と出会った。






そこから少しずつ


何かが狂い始めていたのかもしれない。
4年前、僕は5年勤めた会社を辞め、転職をした。


片道2時間の通勤時間に加え、毎日朝早くから夜遅くまで働き、帰りは終電車がほとんど。

カプセルホテルに泊まる事も何度かあった。

そういった事で体がキツくなってきたのもあるが、1番の理由は妻が二人目を妊娠した事が大きかった。


2歳になる娘には休みの日しか顔を合わせられず、それ以外は寝顔を見る事しかできず、妻も子供も寂しかっただろう。


その1年前に僕は会社で昇進をし、それと同時に転勤になった事で、通勤時間が増え、労働時間も増えた。


そこに来て、二人目が産まれる。


僕はいわゆる子煩悩だった。


娘が可愛いくてしょうがなく、休みの日はよく散歩に連れて行ったり、風呂を入れるのも僕の役になっていた。


そんな可愛い子供がもう一人できる。


妻は口には一度も出さなかったが、朝も夜も会話ができない状態の僕に、きっと不満があったのだと思う。


それでも家事に育児に頑張ってくれていた。



今より少しでも妻の心にゆとりを持たせてあげたいのと、子供達との時間を増やしたいという気持ちが込み上げ、僕は転職を決意した。



この頃の僕は何よりも家族が大事だった。

子供達が宝物で、妻は支えだった。



片親で育った僕は、家族の温かさがこんなにいいものかと毎日実感していた。




そう・・・、



この頃は・・。




幸せを築いて行ってる自分自身で、それを崩す事になるとは、考えもしていなかった。




妻を、

子供を、


周りの人を、



僕は苦しめた。
前回のブログでもプロフィールでも話しているように、僕はバツ1だ。


小学校1年生と、4歳の娘がいる。


離婚したのは去年の6月。

それからは毎月2回子供達と会う、いわゆる『面会』をしている。

この呼び方はどうも違和感があり、この言葉を発するのも使うのも好きではない。

僕の離婚は調停離婚で、成立するまで4ヶ月を要した。

成立後、公正証書に記された項目の一つに、この『面会』があり、毎月2回それを許された。

そして今日、もう何度目になるだろか、その面会の日だった。


今日は元々一緒に住んでいた土地の秋祭りがあり、それに行く予定だった。


でも実際子供達が楽しみにしているのは出店で、それが出始めるのは夕方からなので、昼間は二人が好きなアニメの映画を観に行く事にした。



毎回車に乗せると、助手席の奪い合いが始まる。


大体は長女が譲るような形で次女が座るのだが、今日は珍しく長女が座った。



長女の小学校の話、次女の保育園の話、代わる代わる話を聞きながら、車を走らせる。



しばらくすると、長女が僕に聞いた。


長女『パパは〇〇(長女の名前)の事好き?』

僕『もちろんだよ。パパは毎日毎日二人の事を考えてるよ』

長女『でもお仕事の時は考えられないね』

僕『そんな事ないよ。お仕事してても、二人の事思い出すと元気になってお仕事頑張れるよ』


長女『ふーん・・』



どうしてそんな事聞くのかわからなかったが、僕は冗談交じりに聞いてみた。


僕『〇〇はまたパパと一緒に暮らしたい?』


そう言うと長女は無言で頷き、こう言った。

長女『パパとママはどうして離れちゃったの?』



一瞬返事に困った。

次女はもちろんの事、長女もまだ小さかったので、離婚の原因なんて知ってるはずはない。

ケンカしてる場面を見せてしまった事があるので、仲が良くないのかなとは思わせてたかもしれないが、離婚の本当の理由は知らない。


だから僕はこういうしかなかった。

僕『・・パパが悪い事しちゃったんだよ。だからママとケンカしちゃったりしたんだ。ケンカしてるトコを見せたりしてごめんね』


詳しく話しても理解できるはずない。

でも、僕が悪い事をしたから離婚をし、二人と離ればなれになったのは間違いない。

だから僕はそう答えた。そう答えるしかできなかった。



長女はそれを聞き、少し間を空けてこんな事を言った。


長女『・・パパは悪い事してないよ』



その時ちょうど信号が赤になり、車を停めた。

僕は運転席側の窓から外を見た。

いや、正確には長女と反対側に顔を向けざるを得なかった。


僕の両目はきっと真っ赤だったと思う。

落ちかけた涙をこらえるのに必死だった。



パパは悪い事したんだよ。

でも、娘達は何もわからないまま、パパとの生活が失くなってしまった。


何もわからないからこそ、こうしてあの頃と変わらず、無邪気に楽しんでくれる。


だから、長女の言葉が突き刺さった。



きっと本当の話をしても、わからないままだろう。


そんな幼い子供達を騙しているような気持ちになり、申し訳なさが込み上げてきた。




長女はシートベルトを外し、次女のいる後部座席に移った。


きっと僕の様子を察したんだろう。


長女はそういう子供だ。




人生は後悔の繰り返しなのかもしれない。



その中で、取り返しのつかない後悔が何回かあるだろう。


僕の抱える後悔が取り返しのつかない物なのかどうかは、今はわからない。


だが、今日長女の言葉で、離婚後最も後悔した瞬間になった。




今日も1日楽しかった。


次女はまだまだ抱っこをねだり、ここぞとばかりに甘えてきた。


会う度に大きくなり、重たく感じるが、それも心地良い。



次はいつかな。



今日も楽しませてくれてありがとう。


二人とも大好きだよ。