3次方程式の解の公式 | のこはんのブログ

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3次方程式a₃x³+a₂x²+a₁x+a₀=0を解く

 

概要

1.立方完成(2次の係数が0になるように平行移動)する。A₃(x-p)³+A₁(x-p)+A₀=0

2.X³-3bcX+b³+c³=(X+b+c)(X+bω+cω²)(X+bω²+cω)

と変形できる(ωはω³=1をみたす1ではない数)。

よって、bcを決める事が出来れば解を求められる。

 

1.立方完成

 2.の等式、

X³-3bcX+b³+c³=(X+b+c)(X+bω+cω²)(X+bω²+cω)

左辺には2次の項が無いので、元の方程式左辺、a₃x³+a₂x²+a₁x+a₀

では直接この変形を行うことはできない。

下処理として2次の項を消したい。ここで立方完成を行う。

 

 まず、3次方程式左辺、a₃x³+a₂x²+a₁x+a₀をf(x)と置く。

f(x)=a₃x³+a₂x²+a₁x+a₀

 

x=pを中心としたテイラー展開

f(x)=A₃(x-p)³+A₂(x-p)²+A₁(x-p)+A₀

(ただし、

A₃=f'''(p)/3!、

A₂= f''(p)/2!

A₁= f'(p)/1!、

A₀= f(p)/0!。)

を用いて立方完成を実行する。

2次の項を消すということはA₂を0にすることである。

2!=2だから、f''(p)=0となるpを求める

 

f'(x)=3a₃x²+2a₂x+a₁、

f''(x)=6a₃x+2a₂

f'''(x)=6a₃

 

なので、f''(p)=6a₃p+2a₂=0の解は、p=-(1/3)×(a₂/a₃)である。よって、

A₃=6a₃/3!=a₃、(平行移動しただけなので最高次係数変化しない)

A₂=0、(にすることが目的である。)

A₁=3a₃{-(1/3)×(a₂/a₃)}²+2a₂{-(1/3)×(a₂/a₃)}+a₁

=(1/3)×a₂²/a₃-(2/3)×a₂²/a₃+a₁

=-(1/3)×a₂²/a₃+a₁

A₀=a₃{-(1/3)×(a₂/a₃)}³+a₂{-(1/3)×(a₂/a₃)}²+a₁{-(1/3)×(a₂/a₃)}+a₀

=-(1/27)×a₂³/a₃²+(1/9)×a₂³/a₃²-(1/3)×a₁a₂/a₃+a₀

=(2/27)×a₂³/a₃²-(1/3)a₁a₂/a₃+a₀

となる。

x-pXと置くと、3次方程式は

 

A₃X³+A₁X+A₀=0

 

と変形することができた。

 

2.X³-3bcX+b³+c³=(X+b+c)(X+bω+cω²)(X+bω²+cω)の式変形

 かなり難しい因数分解として、

a³+b³+c³-3abc=(a+b+c)(a²+b²+c²-ab-bc-ca)

はよく知られていると思う(まず閃かないので暗記させられているのではないだろうか)。

この因数分解をさらに進めた(複素数の範囲で因数分解した)、

a³+b³+c³-3abc=(a+b+c)(a+bω+cω²)(a+bω²+cω)

が3次方程式の解の公式の核となっている。

ということで、この因数分解の導出をしていきたい(因数分解の結果を知りたいだけなら飛ばしてもよい)。

 

概要

2-1.3文字3次の対称式a³+b³+c³を基本対称式で表現する

2-2.a³+b³+c³-3abcの因数分解

 

2-1.3文字3次の対称式a³+b³+c³を基本対称式で表現する

 3文字に対する基本対称式は3種類あり、

α=a+b+c      (1次式)、

β=ab+bc+ca (2次式)、

γ=abc           (3次式)である。

 

3次の対称式は、

・1次式の3乗         α³

・1次式と2次式の積 αβ

・3次式                  γ

の3種類であり、3次の対称式a³+b³+c³はこの3つの線形和で表せるはずである。

α³=(a+b+c)³を展開すると、

・3乗の項a³,b³,c³の係数は₃C₃=1

・2乗×1乗の項a²b,ab²,b²c,bc²,c²a,ca²の係数は₃C₂,₁=3

・1乗×1乗×1乗の項abcの係数は₃C₁,₁,₁=6

となり、

また、αβ=(a+b+c)(ab+bc+ca)を展開すると、3×3=9個の項が出てくる。abcは3つ出てくるのと、3乗の項は出てこないのはすぐ分かるので、2乗×1乗の係数は1となる(2乗×1乗の項はa²b,ab²,b²c,bc²,c²a,ca²の6種類出てくるので、残りの項が6個なので係数は1)。9つしか項が出てこない全て書き並べたほうが速い...

よって、αβ=(a+b+c)(ab+bc+ca)を展開すると、

・3乗の項a³,b³,c³の係数は0

・2乗×1乗の項a²b,ab²,b²c,bc²,c²a,ca²の係数は1

・1乗×1乗×1乗の項abcの係数は3

となる。γ=abcは当然ながら、

・3乗の項a³,b³,c³の係数は0

・2乗×1乗の項a²b,ab²,b²c,bc²,c²a,ca²の係数は0

・1乗×1乗×1乗の項abcの係数は1

である。

 

a³+b³+c³をα³=(a+b+c)³、αβ=(a+b+c)(ab+bc+ca)、γ=abcで表した時の係数を求めていく。

3乗の項a³,b³,c³が出てくるのはα³だけなので、α³の係数は1である。

この時、2乗×1乗の項a²b,ab²,b²c,bc²,c²a,ca²が3つと1乗×1乗×1乗の項abc6つ余る。

2乗×1乗の項a²b,ab²,b²c,bc²,c²a,ca²が出てくるのはα³=(a+b+c)³の他にはαβ=(a+b+c)(ab+bc+ca)だけなので、

αβの係数は-3となる。この時、1乗×1乗×1乗の項abc6-3×3=-3つ余る。

よって、γ=abcの係数は3と求まる。

これらをまとめると、a³+b³+c³=α³-3αβ+3γと表せる。

 

1.立方完成で左辺を3次、1次、0次の項にまとめた。

ところで、a³+b³+c³、α³=(a+b+c)³、αβ=(a+b+c)(ab+bc+ca)、γ=abc

a,b,cのうちの特定の1文字の次数について考える。

a³+b³+c³は3次と0次の項、α³=(a+b+c)³は0次から3次まですべての項、αβ=(a+b+c)(ab+bc+ca)は2次、1次、0次の項、γ=abcは1次の項が含まれている。a³+b³+c³=α³-3αβ+3γの左辺がa³+b³+c³だけだと3次と0次の項しかないので、2次の項を含まず1次の項を含むγ=abcを左辺に移すことで左辺をa³+b³+c³-3γ=a³+b³+c³-3abcの3次、1次、0次の項にまとめることができた。このとき右辺は、α³-3αβであり、αで割り切れるので

a³+b³+c³-3abc=α³-3αβ

=α(α²-3β)=(a+b+c){(a+b+c)²-3(ab+bc+ca)}

=(a+b+c)(a²+b²+c²-ab-bc-ca)

という因数分解の形が出てきた。

 

2-2.a³+b³+c³-3abcの因数分解

a³+b³+c³-3abc=(a+b+c)(a²+b²+c²-ab-bc-ca)

と因数分解できた。

a²+b²+c²-ab-bc-caは実数の範囲では因数分解できないが、複素数の範囲では可能である。

aについてまとめると、

a²-(b+c)a+(b²-bc+c²)

となり、a²-(b+c)a+(b²-bc+c²)=0の解を使って因数分解できる。2次方程式の解の公式によると、

a=(1/2)×{(b+c)±√{(b+c)²-4(b²-bc+c²)}}

=(1/2)×{(b+c)±√(-3b²+6bc-3c²)}

=(1/2)×{(b+c)±√{(-3)×(b-c)²}}

=(1/2)× {(b+c)±√3i×(b-c)}

={(1±√3i)/2}b+{(1-±√3i)/2}c

=-ωb-ω²c,-ω²bc

(ω={(-1±√3i)/2}とすると、ω²={(-1∓√3i)/2})

となるから、

a³+b³+c³-3abc=(a+b+c)(a²+b²+c²-ab-bc-ca)

=(a+b+c)(a+bω+cω²)(a+bω²+cω)

と因数分解できた。

 

3.bcを求める

1.でA₃X³+A₁X+A₀=0と変形したものを2.で変形できる形X³-3bcX+b³+c³=0に変形したい。

まず、3乗の係数を1にしたいので、両辺をA₃で割ると、X³+A₁/A₃+A₀/A₃=0となる。

A₁/A₃=B₁、A₀/A₃=B₀と置くと、

X³+B₁X+B₀=0となった。

係数を比較すると、

-3bc=B₁

b³+c³=B₀

の連立方程式が立てられる。

b³c³=-(1/27)B₁³であるから、b³とc³は

t²-B₀t-(1/27)B₁³=0の解である。

これを解くと

t=(1/2)×{B₀±√{B₀²+(4/27)B₁³}}

となる。tはb³とc³の値なので、

b={(1/2)×{B₀+√{B₀²+(4/27)B₁³}}}^(1/3)

c={(1/2)×{B₀ー√{B₀²+(4/27)B₁³}}}^(1/3)

となる。(bcは逆でも問題ない)

 

よって、X³+B₁X+B₀=0の解は

X=-(b+c),-(ωb+ω²c),-(ω²bc)

(ただし、

b={(1/2)×{B₀+√{B₀²+(4/27)B₁³}}}^(1/3)

c={(1/2)×{B₀ー√{B₀²+(4/27)B₁³}}}^(1/3)

である)

 

不思議なことに、実数解が3つの時は平方根の中が負の数になり、解に虚数の3乗根を求める必要が出てくる。

逆に実数解が1つだけの場合は実数の立方根を求めることになるので比較的値を求めやすい。

ただし、前者でも三角関数を使えば虚数の3乗根を求める必要がないらしい。