加賀恭一郎シリーズをいったんお休みして、荒俣氏。
何かとタイパ・コスパと効率重視な世の中に対するアンチテーゼといってもいいのかな。
「人は一途に取り組んでいるとき、意外にもまわりが見えないことがあり、かえって、寄り道、つまりセレンディピティ(偶然)から”掘り出しもの”を見いだすほうが、脳の機能が活発化する」というのは、剣道における脱力と近いのかも? そもそも、人間の集中力なんてそんなに続かないのだから、無理してずーっと集中し続けようとするのではなく、寄り道したり、失敗する中から、思いもよらぬ大発見ってあるものだ、と信じてみるのも大事。私の人生、このセレンディピティに頼りまくって、寄り道と失敗ばかりしてます。大発見、したかな~?!でも楽しい人生を送れていると思います。
また、諦めることの重要性の話も面白かった。「あきらめるな」という教えは世の中に蔓延しているけれど、「仏教でも「あきらめる」ということは煩悩への執着を捨てることを意味するので、非常に前向きな意味合いを持っている」というのは、膝を打つ思いです。龍安寺石庭の「吾唯知足」の精神ともいえるのかな。自分の地頭を受け入れて、競合しないブルーオーシャンを求めていくことで、承認欲求と他責思考から離れ、豊かな人生を切り拓けるのだと思います。何にでも簡単にあきらめてしまうのでは、何も残らないけれど、他人の評価軸に身を任せるのではなく、自分がハマれる分野で、楽しく生きていくのがいい。ある意味、ライスワークとライフワークを切り離すのも、一つの方法なんだと思う。荒俣さんはライス=ライフになったパターンだと思うけど。
※ライスワークとライフワークについては、こちら。この本は、子ども向きだけど、結構おすすめ。
オタクを武器に生きていく | 「めざせ!中学受験!」からの「めざせ!大学受験!?」
「近ごろは長所を伸ばすことがよしとされる風潮にあるが、度を超すと危険だと思う。長所に頼り続けると行き詰ることがけっこう多いのだ。もともと得意なのだからじつは伸びしろが少なかったりする」という指摘は、目から鱗。たしかに、「そこから能力をさらにレベルアップして抜きんでるには、けっこう大きな努力が必要だ」というのはその通り。我が子の得意を見つけようとする親御さんは多いと思うけど、そこに人生賭けちゃうのは結構なリスク。荒俣氏も「度を超すと危険」とおっしゃっているので、全否定されているわけではないけれど、親が先走っちゃうのは危険だな、と思いました。ライスにできなくてもライフワークにできればいいや!と割り切れるあきらめが必要ともいえるかな。
荒俣氏は短所を持つことは悪いことではないと続けます。「短所という一見不利な条件は、気の持ち方次第でいつでも武器に転化できるのである」というのは、勇気はいるけれど、一つの希望ではないでしょうか。プライド高めで承認欲求強めな人には、簡単なことではないかもしれませんが、恥を恥と思わずに武器にしちゃう強さって大事かも。本書ではブスを売りにして親しみやすさで「ブスママ」として成功した銀座のママのことが書かれていました。
荒俣さんの生き方がよくわかる本だと思います。荒俣さんが、何でも興味を持って追究できちゃう方なので、一般人が真似できないところはありますが、研究者気質というか、オタク精神ってこういうことだな、と楽しく読めます。
