本の帯にあるように、漏れなく私も「SDGsにモヤモヤ」していたわけですが、科学者視点で書かれた酒井先生の本を読むと、私が感じていたモヤモヤが何だったのか、クリアになって行く感じがしました。

 

「SDGsとりあえずやってますアピール」を示す、胸にキラキラ輝くピンバッチの7色のキレイゴトを混ぜ合わせると、本来あるべきサステイナブルなうんこ色の循環社会になる、というタイトル回収。酒井先生、サイコー! 

 

 

 

 

プラスチックは燃やして溶かしてしまったほうが、マイクロプラスチックによる被害がなくなるし、ストローの刺さった可哀そうなウミガメのためには、プラスチックストローを諦めるよりもゴミが海洋に流れることを防いだ方が良かったり・・・。

 

本書では触れられていなかったと思うけど、レジ袋有料化前のほうが、袋が焼却炉の中で空気を孕み、袋自体が燃料となって燃焼効率が良かったという話をきいたことがあります。プラスチックを諦め、あるいは一つ一つ確認して分別し、便利と衛生を諦めた結果、本当に地球のためになっているのかというと・・・多くの疑問が残ります。地球の長い歴史から見ると、SDGsの目標は無理があり、「ぼちぼち」付き合うしかない、ということです。

 

SDGsの話と共に興味深かったのが、先生の今どきの若者に関する著述です。

今の学生は、「ゴールをきれいにまとめること」、「正しい結果が出ること」を想定して、「そのための準備をしないと安心しない」ということが書かれていました。つまり、若者は綺麗にゴールをまとめるのが好きだから、SDGの7色のキラキラ輝くゴールに目を奪われて、そこにある矛盾や疑問点に目をつむり、うんこ色の循環社会に目を向けられなかったり、興味を持たなかったりするのかもしれません。

 

「『やりたいこと』を選ぶというより、『やるべきこと』を選ぼうとしているように」みえ、そして「レールから外れることを恐れる」・・・これだと、あまのじゃくな逆張り科学者が生まれにくく、結果、多様性が失われ、サステイナブルでなくなってしまうという話です。

 

将来の見通しが暗いばっかりに、我が子が『正しい結果』を得るように、親や先生方が徹底的にサポートしすぎなのかもしれません。中高生の勉強や、進学・就職に親が手を貸し過ぎる昨今の風潮への違和感と同じものを覚えました。

 

酒井先生の本は、『京大変人講座シリーズ』をはじめ、『京大的アホがなぜ必要か』『都市を冷やすフラクタル日除け』などを読んでおくと、なおのこと、先生の主張がわかりやすく感じるかもしれません。この本が面白かった方には、ぜひお薦めしたいです。