ざっくり要約すると、人生初期には流動性知能を頼りにキャリアを積むが、ピークが訪れた後に落ち込みが訪れる。そこで、うまく、過去に学んだ知識の蓄えを活用する結晶性知能の必要なキャリアに移行・再設計できれば、ピークは遅れ、落ち込みも先に延ばせる・・・・という話。

 

著者が、敬虔なプロテスタントファミリー出身で、途中からカトリックに改宗した方であることから、キリスト教的な価値観が常に根底にあるので、教義に馴染みのある人のほうが、理解しやすいかもしれません。また、東洋哲学や音楽(著者はホルン奏者)に興味がある方も楽しく読めると思います。

 

「戦略書」という割には、具体性は乏しいのが難点とは思いましたが、人生における幸福や満足については、若いうちから知っていて欲しいことが多く書かれていました。

 

多くの人は「幸福であること」よりも「特別であること」に囚われてしまっている。

フォロワー数何人とか、訪れた外国の数とか、登頂した山の数などもそうだし、学歴至高主義や仕事依存・成功依存も同じ。

バケットリストに書く項目は、本当に自分の幸福を叶えるものなのか?というと、怪しいものばかりで、単なる虚栄心、承認欲求。常に満たされず、新しい何かを探してしまうのだと思います。短い休みに、無理して旅行を詰め込んで、仕事をするみたいに最安で効率的なルートを考えて観光地を回ることを考えるのは、本当に幸福なのか? 実は、ぼーっと家族と一日ダラダラ過ごすことのほうが幸福だったりするのかもしれないよね。

 

私が非常に面白く感じたのは第4章 欲や執着を削る でした。

「西洋は、芸術は無から生み出されるものだと考えており、真っ白なキャンバスに人間が形を与えて作っていくのに対し、東洋は、芸術はすでにあって、それを明らかにするのが人間の仕事であり、芸術でない部分を取り除いて姿を与える」

「クラシック音楽は『正解』に至るまで音を足し、交響曲のような巨大なオーケストラになるのに対し、ラーガ(インドの音楽)は『本当の音楽』をぼやかす音をすべて切り捨て、少人数の合奏になる」

西洋の足し算と東洋の引き算という視点は興味深いです。

 

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本書で、著者が高校生の息子さんから「僕が生きるうえで本当に手に入れてもらいたいものを3つ挙げるとしたら何?」と聞かれた話があります。

 

何の前情報も与えずに、夫に聞いたところ、夫の答えは「仲の良い家族・前向きな思考・健康」でした。夫が「名声」や「お金」という男じゃなくてよかった、と安心しました。笑

 

ちなみに、著者は「誠実、思いやり、信頼」さえ身に着ければ可能な限り最良の人間に慣れると感じたとありました。

この3つはとても宗教的に感じたし、学校の校訓によくあるような、普遍的なものだと思います。時代が変わっても、国が変わっても、人間が生きていく上で本当に必要なことは、きっと変わらないのだと思います。学校に行かずに塾だけいっても、大学には入れるかもしれないけれど、人が生きるうえで大切なことは学べないはずなのに、最近、多くの中学受験生の親御さんが学校に求めるものが塾ナシの手厚いお世話や進学実績であるのを見るにつけ、それで本当に良いのかな?って思ってしまいます。