手に取ったきっかけは、「もしかすると、彼女は発達障害なのではないか?」と思う人がいたから。

 

 

採用というのは、とっても難しい。

せっかく採用したのに、すぐに辞められてしまうと、その人への指導に費やした時間が全て無駄になる。(ついでに、短期間に同じことをもう一度やらなきゃいけないという不毛・・・・)

かといって、その人が長く在籍することによる、長期的なトラブルも避けなければならない。

 

「いい人なんだけどねぇ・・・」ってことはたくさんある。

湯屋にいるカオナシみたいなもので、たまたま、湯屋が合わないだけで、カオナシは別なところに行けば輝ける・・・そんなこともある。きっと誰にでも、適所があると思うのだけど、そこを見つけるのが難しい。

 

この本に出てきた自己愛性パーソナリティ(優位性志向型)の方の場合、本当のキャラは小学生時代の「引っ込み思案」。でも、それを克服してキャラ変、バリバリのリーダーになって、人望を集めて、常に1番でいることを良しとしてきた。ところが、ある日突然、会社に行けなくなってしまった。意外と、この人の本質が活かせる場所というのは、本人が望まないであろう、地味で退屈な仕事だったのかもしれない。本質的なキャラと、作り上げたキャラ、どちらもその人ではあるのだけど、作り上げたキャラを演じ続けると、どこかで無理が生じる。この方の場合、小学生時代の屈辱を二度と味わいたくないという恐怖心が、常にリーダー&常に一番というモチベーションになってしまっていたようだ。いわゆる、外発的動機に基づいた行動だから、疲れるんだろうな・・・。

 

上記とは真逆のスキゾイドパーソナリティ(自己志向型)の方の場合、ITエンジニアとしてのご自身の内発的動機が明確なのに、苦手な営業をやらされたり、管理職で板挟みになったり・・・ということがあり、降格してホッとしたタイプ。向いてない配置や、誰もが出世したいわけじゃないのに、良かれと思って出世させられちゃったり・・・という不幸もある。でも、この方の場合、ちゃんと自分の希望(内発的動機)があるから、あんまり心配ない気がする。自分の喜びを、相手の評価に委ねるより、自分の感性に委ねたほうが、よっぽど人生が楽になるんじゃないかと・・・・。

 

このほか、この本の中で興味深かったのが、以下3点。

1)ワーキングメモリー不足はIQ・学歴とリンクしない

2)一体化願望(親離れの失敗)

3)アイデンティティなき受動型(思春期の葛藤の欠如)

 

ちょっと長くなりますが、続けます。

 

1)ワーキングメモリについて

ワーキングメモリーとは、作業記憶のことで、一度に考えられる容量のことを指すそうです。つまり、これが小さいと、マルチタスクができない。さらに、目先のことしか見えず、想像力を働かせることもできないので、対人関係でも問題を起こしやすいそうだ。

 

これ、生まれつきの特性みたいなもので、そう簡単に容量を増やせることでもないそうだ・・・。IQや学歴との相関性がないようで、高学歴だけど、社会での適応力が低いなんてこともありえる。受験では範囲が決まった勉強になるだれど、仕事では想定外の業務・突発事項が避けられない。結果、大量の仕事をこなせない、スピードが出ない、雪だるま式に仕事が残る・・・・。「○○大のくせに、つかえねーな」って言われちゃう不幸な方は、このタイプなのかもしれない。さらなる不幸は、「自分はできる人間だ」「大きなことをやりたい」と思っていても、ワーキングメモリーの不足は補えないので、適所を見つけて生きていくしかないこと。高学歴になればなるほど、ここで葛藤してしまいそう。本人のプライドが肥大する前に、手を打ってあげないとしんどいだろうなぁ・・・・。拗らせちゃう人は、拗らせちゃうと思う。中学受験で詰め込んで成功しちゃった子なんかも、厳しいのかもしれないな。実力以上の学校に行ってしまったものの、生まれそなったワーキングメモリーが小さければ、いつかは詰む。

 

2)一体化願望について

一体化願望の強い人は、親離れをしにくく、自分の理想を親に要求したり、すべてをわかってもらおうとして、それが叶わなかったとき、問題行動を起こすことが多いらしい。親に見切りをつけて性的乱脈行為とか、拒食症・過食症とかリストカット・・・怖すぎる。「お母さんは何もわかってくれない!」的被害妄想が、会社や上司に向けられたりすることも。

 

「リーダー的役割を果たしたい!」というのも、場合によっては、他者や組織との一体感願望の強さの表れであることがあるそうだ。対象と価値観や判断基準を共有することで安心感を得ようとするが、それができないと不安定になる・・・・その怒りは他者に向くこともあれば、自己に向いて不安・鬱になることもある。これもまた、親離れ、母親離れができていないことに起因するケースが多いらしい。いわゆる、メンヘラとか、かまってちゃんと呼ばれるタイプかな? 親が子に構いすぎていても、こういう子を育ててしまうのかもしれない。

 

3)アイデンティティについて

受動型で、自分の興味があることにしか固執せず、明確な役割がないと動けないタイプ。ハマればハマるけど、ストライクゾーンが狭いと、すぐに会社を辞めちゃう。いつまでも自分探ししてるタイプかな。

 

アイデンティティというものは、思春期に無茶をしたり、他人と意見をぶつかり合わせて練られていくものなんだそうだ。そういう、衝突や葛藤によって、自分の価値観や世界観ができてくる、その過程が大事なのに、今どきの若者はそのトレーニングがすくなく、葛藤したり、悩んだりしていない、という指摘があった。

 

どうなんだろうな、衝突回避の時代なんだろうか? いわゆる、殴り合いのけんかをして、お互いをぶつけ合って、仲直り・・・みたいな国語の問題文を読み取れない子が多い(殴り合いして仲直りなんて、意味わかんない!)ってきいたことがあるし、学校から帰ってきたら塾だの習い事だのと、子ども同士が遊ぶ時間も減っているのかもしれない。冒頭に書いた、キャラ変したリーダーは、負けたくないから正面衝突を回避して、自分が一番でいられる場を無意識に探している。負けず嫌いのくせに、いや、負けず嫌いだからこそ、強い相手と組みたがらない。ずるいな~。

 

うーーーん。

なかなか面白い本だった。

仕事にも、子育てにも、少しずつここで得た知恵を活かせそうな気がします。