【書評】 ともぐい | "Food for Thought"

"Food for Thought"

日々考えていることを、自分の思考をまとめるためにも書きつづっています。

『ともぐい』 河﨑 秋子 著

 

 直木賞受賞作ではあったものの、熊との闘いなんて…とスルーしていたところ、読書傾向の合う友人から薦められ読了。これは、なかなか読ませます。また、新しい著作形態とも思いました。

 

 日露戦争前の山の猟師と熊の闘いと言ってみればそれまでですが、短い文章での描写は臨場感たっぷりで、読みだすと惹きつけられます。「ジュラシック・パーク」を見ている感覚になる部分もあり、まるで映画の脚本を読んでようです。

 

狩りや動物の生態も詳しく調べてあり、「これ、本当に女性の作品?」と思わせるほど一貫して男性目線の感性で書かれています。リアリズムに徹し、読む人を引っ張り続ける筆力には「オヌシ、ただものではないな」と思いました。人生訓めいたものはないのでしょうが、個人的には新しい文学形態と、直木賞受賞に納得した一冊です。