「ダイヤモンドか警備員、さあどっちだ?」

事件が起きたのは昨日の深夜。
ある博物館からダイヤモンドが盗まれたのだ。
幸い、警戒中のパトカーが犯人が奪った博物館の車を発見し、あるごみ焼却場まで追い詰める事ができた。
犯人は武装している恐れがあり、うかつには近寄れず、緊迫した時間が流れた。
そして一夜明けた今朝、警察にこんな電話が入ったのだ。

「ダイヤモンドは頂いた。盗む際、邪魔をした警備員も俺の手の中にある。
つまりこちらには人質がいるという事だ。
俺の目的はダイヤモンドではない。現金だ。3億円用意しろ。
そこでお前らに選択権をやる。3億円と引き換えにダイヤモンドか警備員、どちらかを返してやる。
どちらを選んだ場合も、残った一方は焼却炉で燃やす。
午後3時までに決めろ。」


警察は悩んだ。
犯人が盗んだダイヤモンドは時価10億円はする代物だった。
ダイヤモンドを取り返した場合警備員は死ぬ事になり、そのような事は世間が許さないだろう。
かといってみすみす10億円を灰にしてしまい、さらに3億円払ってしまっては犯人の思う壺ではないか。

悩んだ結果、警察はダイヤはあきらめ、警備員を取り戻す事にした。
倫理上、こうするしかない事は誰もがわかっていたことだ。

やがて犯人から再び電話がかかってきた。

「さて、3時になったがどちらにするか決めたか?」

「警備員を返してくれ。人命には代えられん。ただし、無傷で返すんだ。」

「よし分かった。先に警備員を開放する。」


やがて両手を挙げた警備員が焼却場の中から歩いてきた。
警備員を介抱すると、警察は犯人に向ってメガホンで言った。

「バカなやつめ!!先に人質を返してしまったら金は手に入らんぞ!!」

しかし、犯人からは何の返答もない。
恐る恐る武装した警官が焼却場の中に突入してみると、そこには誰もいなかった。


「しまった!犯人の目的はもともとダイヤモンドだったのだ!まんまと逃げられた!!」


警察は必至で犯人を追ったが、結局捕まえる事はできなかった。


開放された警備員は、警察の要求どおり無傷だったのでその日のうちに家に帰された。
家に帰ると妻が心配そうな顔で駆け寄ってきた。

「あなた、大変でしたね。怪我はありませんか?」

「うん。大丈夫だ。一時はどうなる事かと思ったが、とっさの機転で何とかなったよ。」

そう言うと警備員は制服のポケットからダイヤモンドを取り出し、微笑んだ。

「警察もバカだな。まぁ、倫理上こうするしかない事は誰もがわかっていたことだが。」